このプログラムでは、私たちが痛みをどのように理解しているのかを見ていきます。
たいへん エキサイティングなことは・・・脳神経科学の 研究成果によって、
痛みに苦しむ人々を 救えるのではないかという 希望を臨床医が持てるようになったことです。そしてこの希望は、痛みに苦しむ人々の希望でもあります。
私たちが用意している治療法は、あなたの人生に対する痛みの悪影響を減らすだけでなく、あなたの痛みそのものを軽減することを助けることができると、今、私たちは考えています。
本来、痛みは私たちの生命を守るための重要な機能で、何かがあると「痛み」が発生し、警告システムとして受容体からのメッセージが脊髄を通して脳に伝わり、そして、私たちは必要に応じた行動をとることができます。
痛みがどう作用するのか、どのように神経系の中でメッセージが修正されたり変更されたりするのか 説明する方法の一つは、私たちが脳への情報量を調節するフィルタまたはゲート持っている、ということです。座っている椅子、着ている服、・・朝食に食べたもの、そういった情報のすべてが、受容体から脊髄を通して脳に届きます。これらのフィルタは
情報量を制御することにおいて、とても重要な役割を果たします。
私たちの脳には、全ての情報が流れ込んでいるわけではないのです反対に、問題となるような大きなシグナルが発生し 痛みを経験した場合、ゲートは開き、脳は、対応すべき何かがあると認識します。
そうです、急疼痛と慢性痛は、まったく違うものなのです・・・。
a急性痛と慢性痛では、痛みをどう経験しているかが違うだけでなく、どうコントロールできるかも違うのです。
急性痛の場合は、痛みが発生している場所から脳へとメッセージが伝わっていきます。この痛みには、脊髄のゲートは非常によく働きます。強い薬などが与えられれば、私たちはこのゲートを閉め、ゲートを通る痛みの情報量を少なくし、痛みをうまくコントロールすることができます。
慢性痛の場合、このゲートを閉じるのははるかに困難になります。通常の急性痛の処置では、強い薬を使ってさえも、うまく痛みを軽減できないことがあります。このため、効果的に慢性的な痛みを管理するには他の方法を使わなければなりません。
慢性痛で診察に来る人の多くが、X線やスキャンなど多くの検査を受けてきます。でも検査では、何も見つからないことは珍しくありません。そういった場合、痛みは頭の中だけのもの、または、でっち上げられたものかもしれないというメッセージとなることがあります。また別の場合には、痛みの引き金となっている損傷や病気が、それほど大きくないにもかかわらず、ゲートが開いてしまい、ゲートを通る痛みの情報量が増し、その結果はるかに強く痛みを経験するということもあります。
実際に私は、関節炎だけでなく、神経痛、帯状疱疹の痛み、癌の痛み、狼瘡など自己免疫疾患による痛みなど、さまざまな種類の痛みをもつ人を大勢診てきました。こういったさまざまな病気は全て、痛みの引きがねになるのです。
しかし、このゲートの概念は、こういったさまざまな病気をもつ全ての人に、等しく関係するもので、同じように重要です。つまり、ゲートが開き、ゲートを通る痛みの情報量が増えると、痛みの経験はさらにより強くより強烈になる―そしてそれは、ゲートで情報量の増幅が起こっているからなのです。
しかし嬉しいことに、ゲートを閉じて、痛みの情報量を下げる手立てがあります。
現在分かっていることは、脳から脊髄にかけてこの神経系のゲートをコントロールすることができる経路があり、その経路を通って脳から放出された化学物質が下りていくということです。
これらのうちのいくつかは、ゲートを開く役割の興奮性化学物質で、これらのうちのいくつかは、ゲートを閉じゲートを通る情報量を抑える抑制性化学物質です。
私たちの思考や感情によって、使われる経路が変わったり、放出される化学物質の種類が変わったりすることがわかっています。
例えば、私たちが疲れていたり、ストレスにさらされていたり、不安だったりすると、ゲートを開く興奮性化学物質が放出され、その結果、痛みは増大されます。
反対に、私たちが落ち着いてリラックスしているときは、ゲートを閉じる抑制性化学物質が放出され、その結果、痛みは軽減されます。
だから、私たちの考えや気持ちは、どのように痛みを経験するかについて、とても重要なのです。
研究からわかったとても興味深いことは、神経可塑性の概念に関係しています。
簡単に言うと、それは、脳と神経系は絶えず変化し続けているということです。
嬉しいことに、これは私たちに希望をもたらしてくれます。つまり、私たちがそう望むなら、脳を再トレーニングして痛みの情報の増幅を減らし、その量を少なくする手立てがあるのです。
痛みを和らげるために役立つ戦略があらゆる範囲にわたってあります。
運動、リラクゼーション、気晴らし、瞑想、食事療法など・・・。
こういったこと全てが、痛みに対処するのに有効であることを、私たちは知っています。ただし、一つの手立てで目的を達成できるトリックのようなことは、まずありません。
つまり、こういったこと全てに目を向けて、その中で自分にとってうまく行くものを見つけ、それに取り組むべきだということなのです。
人々は・・私を見て 考えこみます・・・
「うーん・・・どうしてそれで本当に私の痛みが改善するのでしょうか?私の痛みは深刻です。この痛みには、どんな原因にせよ、ちゃんとした原因があるはずです。運動だとか瞑想だとか、その他ここでお聞きしたようなことをいくつかやって、そんなことで本当に効果があるのでしょうか?」
嬉しいことに、それで効果があるのです。
私はこれまでに、そう言っていた人たちが2~3か月後に戻ってきて、こういったスキルの実践を始め、そして生活の質を向上させたことを、見てきました。そうです、これは本当に効果があるのです。
私が皆さんに申し上げていることの一つは、痛みを一人だけで管理することはないということです。あなたのまわりには、友人、家族、そして医療専門家がいます。そういった人たちと一緒に取り組むようにしましょう。あなたがどのように進んでいくといいか、一緒に計画を立てるのもよいでしょう。
そして、それは一夜にして成し遂げられることではないということを覚えておいてくださいね。
これはとても役に立つ方法ですが、時間と練習が必要です。この方法がうまく機能するまでには、少し時間がかかると思ってください。また、このスキルを生活の一部として取り込むことも必要です。
しかし、一旦あなたがそれを始めたら、私たちは変化が起きるのを見ることができるでしょう。
あなたの痛みを管理する、あなた自身の計画を立てるために、ビデオの下の「私のヘルスプラン」ボタンをクリックして、PDF(私のヘルスプラン)をダウンロードしてください。
それを印刷して、各ビデオの後に、関連セクションに書き込んでください。
あなたは、一度それに記入すればよいのです。
完成した「私のヘルスプラン」をGPか医療専門家に持って行ってください。
これはあなたの痛みを管理するための素晴らしい出発点です。