もちろん、慢性疼痛の管理には薬を使うことができます。実際、私たちは薬を使いますし、薬で疼痛管理を試みます。しかし、それが必ずしも痛みの根本的な解決策になるとは限りません。また、考えておかなければいけないことが、ほかにもたくさんあります。
私たちは長い間、オピオイドを処方してきて、それが鎮痛薬としてよく効くことを知っていますが、最近ではその副作用をはっきりと意識するようになりました。
短期間の使用でさえ、日常生活に障害をきたす可能性があるのです。
鎮痛薬の使用をやめたことは、私にとって本当によいことでした。なぜなら、頭がすっきりして、考えがまとまりやすくなったからです。
前ほど疲れやすくなくなり、気力が戻ってきました。その上、忘れかけていた、以前は当たり前にしていたことが、またできるようになっていることに気が付きました。
医師は多くの薬を処方してくれました。フェンタニルパッチに、オキシコンチン、それに複数の用量のエンドンを試しましたし、モルヒネパッチや・・ええっとパナデインフォルテも使ってみました…とにかく何でも試しました。薬という方法で、何とかして痛みを和らげようとしたのです。でも、あまりうまくいきませんでした。うまくいくどころか、しばらくすると体が痛みに過敏になってしまいました。それほどたくさんの薬を使っていました。夫に言わせると、私はモルヒネでもうろうとした状態で歩き回っていました。数年もの間、まるでゾンビのような状態だったのです。何もできず、日常の家事さえできませんでした。
精神的にも身体的にもまいっていましたので、子どもの面倒はいつもベビーシッターに任せきりでした。精力的で冒険好きだったこの私が、こんなにも自分の殻に閉じこもるようになったと思うと、情けなくなりました。
これらの薬は、短期間の使用を想定したものです。長期間の使用が好ましくないのは、副作用がさらにひどくなるからです。
よくみられる副作用としては、眠気、目のかすみ、口の乾燥、頭痛、吐き気、便秘、頭のもやもや感、記憶喪失などがあります。
また、睡眠の質の低下、睡眠時無呼吸症候群の悪化、免疫力の低下、テストステロン値の低下、性欲減退、不妊症、うつ病などの原因になることもあります。
そのほかにも、転倒、意図しない過剰摂取なども起きており、死に至るケースもあります。
オピオイドを長期間使用すると、高用量の場合だけでなく、適切な量であっても、ときに「痛覚過敏」が生じることがあります。
痛覚過敏になると、痛みの感じ方が普段より強くなります。痛みを和らげるはずの薬が、痛みを強くしてしまうのです。これには、オピオイドが体にもたらす変化が関係しています。
誰かとぶつかったり、足の指を何かにぶつけたりすると、以前より強い痛みを感じるようになったことに気づき、変だなと思いました。
それで、かかりつけの医師の診察を受けたとき、少し痛みに過敏になっていることを話しました。彼女の説明では、体内の薬の量が増えすぎたことが原因かもしれないということでした。
以前よりも強い痛みが生じるようになったのです。私はオピオイドの服用を続けていたので、痛みに過敏になり、痛みは軽減されるどころか、もっとひどくなってしまいました。
オピオイドを一定期間使用し続けると、効果が弱まって、痛みが緩和されにくくなることに気づくかもしれません。
これは「耐性」と呼ばれ、薬に対する身体的な依存症を意味します。以前と同じ効果を得るためには服用量を増やし続けなければならず、それが体にさらに大きな害を及ぼすことになります。
薬をあまりにも長く服用し続けたので、体が薬に慣れてしまったのです。服用を始めて数カ月後には、前ほど効果がなくなったように感じました。私の体調も、服用を始めたころほどよくありませんでした。用量を5ミリグラム増やし、またさらに5ミリグラム増やすといったことを繰り返しているうち、その薬の最大用量に達したうえ、それからは、ほかの薬も追加で服用するようになり、どんどんひどくなるばかりでした。そして手術後に集中治療室で目覚めたとき、痛みをコントロールできない状態に陥っていました。これが私にとっての警鐘となりました。どこまで薬の量を増やそうというのか?と。また痛い手術を受けなければならないときに、痛みを全く抑えられない状況に陥ってしまうのだろうか?と。それで学んだのです。今では痛いと感じるときにだけ薬を飲むように気をつけ、痛みがなくなれば薬をやめられるようになりたいのです。常に薬を服用して、効果がなくなったらさらに用量を増やすようなことは、もうしたくないです。
かかりつけの医師に相談して、使用している薬を定期的に見直すことが大切です。かかりつけの医師は、鎮痛効果、機能、副作用を総合的に評価して、薬の使用を続けることが有益かどうかを判断します。
副作用があまりにひどいなら、薬が患者さんに与えている害を考慮に入れ、患者さんと相談して痛みを管理する別の方法を検討します。
疼痛管理に使用される薬には、様々な種類があります。痛みの管理といえば、主にオピオイド系の薬のことしか聞いたことがないかもしれませんが、その他にも、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗炎症薬、あるいはアセトアミノフェンのようなシンプルな鎮痛薬も使用されます。
私たちは医療のプロフェッショナルとして、常に個々の治療法のメリットとリスクを天秤にかけてから、患者さんに提案しています。
今使っている薬がよく効いているなら、それはよいことですが、それでも、ほかの治療法も考慮に入れておくことをお勧めします。もっと効果的な治療法がほかにあるかもしれないからです。最も重要なことは、生活の質を高めることです。
薬をやめたときには、ひどい禁断症状が出ましたが、でも結果的には、がんばった価値はありました。とても時間がかかりました。一夜にしてやめたのではなく、
徐々に量を減らしていきました。そうすると、服用量を少しずつ減らすたびに痛みも少なくなり、体の具合もだんだんよくなりました。そして、ついにある朝、とても気持ちよく目覚めることができて、その日の予定を立てている自分に気づきました。それまでの私では考えられなかったことです。
自分の判断で薬をやめるのはよくありません。そのせいで具合が悪くなり、ひどく苦しむことがあるからです。
「薬を全部やめましょう。意志があればできることです」と医師に言われましたが、最初はとても懐疑的でした。初めは少し抵抗がありましたが、私は危機的な状況にあり、薬が効かなくなった以上、他の方法を試さなければなりませんでした。前にも言いましたように、私は理学療法、ハイドロセラピー、鍼治療など、あらゆる治療法を試してみましたが、どれもあまり効果がありませんでした。
しかし、ペース配分の仕方や気分転換の方法、私が最初にやったような急激で無謀な方法ではなく、時間をかけて薬の服用をやめる方法といった情報を取り入れ、それらの方法に従うようになってからは、心と体を切り離すようにして自分の体を憎むのではなく、心と体の折り合いをつけることができるようになりました。
私はちょっと聞き分けの悪い患者で、交通事故による外傷のため、もう子どもは産まないほうがよいと医師に言われても、その言葉を聞かず、妊娠しました。残念ながら、言われたとおり痛みが再発したので再び断続的に薬を服用することになりました。でも、今回は、決して薬に人生を振り回されないように気を付けています。今回は毎日飲む必要はありませんし、薬以外の方法があるから家に薬が無くても前のように不安になることはないです。
家に薬がなくてもパニックにはなりません。痛みを抑えるための他の方法を知っているからです。とにかくまず薬を、という考えはなくなりました。前は、この痛みを取り除けるのなら、何でもいいから、とにかく薬がないか家中をあさり回っていました。薬をすべてやめて、ほかの方法について学んでからは、裏のベランダに出てみるだけで、人生がとても明るくなり、何もかもが一変したような気がしました。裏庭に行って、ウサギのケージに干し草を入れてやるような、簡単で小さなことが面倒ではなくなり、楽しめるようになりました。
それでは、私のヘルスプランの中の「薬」の項目に記入しましょう。
まだダウンロードされていない場合は、映像画面の下にある私のヘルスプランのリンクからPDFファイルをダウンロードし、
印刷してください。
それぞれのビデオを見終わったら、適切な項目に書き込んでください。
一度記入していただくだけで結構です。
記入した私のヘルスプランは、かかりつけの医師や医療従事者の診察を受ける際にお持ちください。
痛みを管理するうえで、素晴らしいスタートポイントとなるでしょう。