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ギックリ腰は、恐くない=ギックリ腰の正しい対処法
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つらいギックリ腰、こうすれば早く治ります。 松平 浩 先生が最新の情報を元に教えます。


【 目 次 】
ビデオ1.はじめに:腰痛を怖がらないでください!!
ビデオ2.赤信号の腰痛:気を付けるべき症状
ビデオ3.ギックリ腰への対処法:最新の腰痛ガイドラインより
ビデオ4.ギックリ腰の再発を防ごう:コツは怖がらず動くこと
ビデオ5.黄信号:慢性腰痛を引き起こすリスク因子
ビデオ6.豪州の取り組み:腰痛患者を減らした国
このWebページ作成の目的
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ビデオ1.はじめに:腰痛を怖がらないでください!!

 

 ギックリ腰などの腰痛を怖がらないでください。

 不安がかえって症状を悪化させることがあります。ほとんどの腰痛は数日から数週間、長くても3か月で改善します。むやみに安静にするより、日常生活をなるべく維持し、できれば仕事にも行くほうが早く治ることが確かめられています。

 しかし、現実には本来3か月以内で治っていくはずなのに、長引いて慢性腰痛になってしまう方も少なくありません。

 ギックリ腰を起こした後の対応が悪かったのかもしれません。このページは最新の医学情報を元にギックリ腰を長引かせないよう、より良い対応を皆様にお伝えし慢性腰痛を減らすことを目的にしています。

 但し、ごく稀にですが、腰痛の陰に深刻な病やけが:いわば「赤信号」の腰痛が潜んでいる場合があります。その場合は必ず医師の診断と治療が必要になります。まずは、その見分け方を「赤信号の腰痛」のビデオで学んでください。






ビデオ2.赤信号の腰痛:気を付けるべき症状

 

 ほとんどの腰痛は、3か月以内に自然治癒する・・いわば青信号の腰痛です。しかし、稀ではありますが深刻な事態に結び付く赤信号の腰痛もあります。

 以下のようなサインが1つでもあれば、赤信号の腰痛である可能性もあると考えて医療機関を受診するようにしましょう。
  1. 転んでしりもちをついたなどの後に痛みだした日常生活に支障がでるほどの腰痛の場合は、・・骨折している可能性があります。
  2. 65歳以上の女性で、朝布団から起き上がろうとすると背中や腰に強い痛みを感じたという場合には・・、骨粗鬆症の伴う骨折の可能性があります。
  3. 横になってじっとしていても疼くような痛みがある。または、鎮痛剤を1か月使っても頑固な痛みが取れない場合は・・、脊椎やその他の部分の重い病気の可能性が疑われます。例えば、感染性脊椎炎、脊椎腫瘍、がんの骨転移、多発性骨髄腫、突然背中に激痛がでる急性大動脈解離などです。
  4. 肛門や性器の周りが熱くなったり、しびれたり、感覚が鈍くなったりする。尿が出にくい、または歩く と尿が漏れそうになる場合には、重症の椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄症による神経症状を疑う必要があります。
  5. 足に力が入らない、つま先歩きが難しいなどの症状の場合にも、重症の椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄症による筋力低下の可能性があります。また、脳や脊髄の病気の疑いもあるので病院など医療機関で診ていただきましょう。
 とはいえ、ほとんどの腰痛は、青信号の腰痛です。恐れ過ぎずにできるだけ日常生活を保つようにしましょう。それがギックリ腰を早く治すコツなのです。

参考:東大病院 22世紀医療センター 運動疼痛メディカルリサーチ&マネージメント講座 非特異的腰痛とは http://lbp4u.com/youtu/
腰痛は脳で治す 3秒これだけ体操 松平浩著(世界文化社)
一回3秒これだけ体操 腰痛は「動かして」治しなさい 松平浩著(講談社)






ビデオ3.ギックリ腰への対処法:最新の腰痛ガイドラインより

 

 ひとたびギックリ腰を体験すると、痛みへの恐怖や不安から腰をかばいすぎるようになりがちです。

 「赤信号の腰痛のビデオ」で述べた症状がないのなら、動けないほどの痛みがあったとしてもベッドなどで安静にするのは長くても2日までにしましょう。

 過去の多くの研究結果をもとにして作られた西欧諸国の多くの腰痛ガイドラインには「2日を超えるベッドでの安静を指示すべきでない」と書かれています。
 更には、患者さんに「不安をあおらず安心感を与える」ことが治療として大変大事であると述べられています。

 赤信号がないのなら、「心配はいらない。すぐ治る。」と考えてできる限り普段通りに動いていいのです。それが治療になるのです。
 具体的には、ギックリ腰の発症直後であっても動かせる範囲で体を動かしていきましょう。痛み止めの薬は、短期間きちんと使うほうが望ましいとされています。薬を使いながらでも無理のない範囲でできるだけ日常生活を続けていただき、可能ならいつものように仕事もしたほうがいいのです。

 傷口が治ると同じように、腰痛も次第におさまります。

参考:腰痛は脳で治す 3秒これだけ体操 松平浩著(世界文化社)
NHKまる得マガジン 腰痛はもう怖くない 3秒から始める 腰痛体操(日本放送協会 NHK出版)
一回3秒これだけ体操 腰痛は「動かして」治しなさい 松平浩著(講談社)






ビデオ4.ギックリ腰の再発を防ごう:コツは怖がらず動くこと

参考:「これだけ体操?」をYoutubeで見る   

 2011年に私たちは、ギックリ腰になったあと安静にしているほうがいいのかできるだけ動いたほうがいいのかを比べる調査をしました。
 その結果、3ヶ月以上の痛みが続いたのは、安静にしていた人では3割いましたが、できるだけ動いた人は・・なんとゼロでした。
 また、ギックリ腰が2回以上再発した人は、安静にしていた人で約5割。しかし、できるだけ動いた人は、その半分以下の2割程度でした。

ギックリ腰を早く治し、再発することが無いようにするには、安静にするのではなく、無理のない範囲でできるだけ動いていくことです。

 また、ギックリ腰を経験すると、またあの痛みがやってきたら怖いなと不安になる人も多いのです。でも、恐れ過ぎて神経過敏になるのは逆効果です。
 腰に神経を集中し大事にしすぎるとかえってギックリ腰が再発したり、痛みがひどくなったりしやすいのです。

 ギックリ腰は、私が考案した「これだけ体操?」でかなり予防できます。参考にしてみてください。


参考:一回3秒これだけ体操 腰痛は「動かして」治しなさい 松平浩著(講談社)
腰痛は脳で治す 松平浩、笠原諭箸(宝島社)
腰痛借金 痛みは消える! 松平浩、勝平純司箸(辰巳出版)






ビデオ5.黄信号:慢性腰痛を引き起こすリスク因子

 

青信号の腰痛を悪化させたり治りにくくするものの正体は、不安や恐怖、心理的ストレスだということがわかってきました。つまりそれらは腰痛の黄信号(要注意状態)なのです。

 人間関係に悩んだり、イライラしたりしていたら、誰かに相談したり、日記などに想いを書いてみたりすると気持ちが楽になることもあります。
 好きな音楽を楽しんだり趣味に没頭したりすることは、脳内物質ドーパミンの分泌を促します。ウオーキングなど適度な運動や正しい呼吸法は、セロトニンの分泌を高めます。自分に合った方法でストレスに対処することで、腰痛につながる脳機能の不具合を予防することができます。

 脳の「側坐核(そくざかく)」が良好に働いている状態をSunny Brain(楽観脳)、扁桃体が必要以上に興奮している状態をRainy Brain(悲観脳)と呼びます。これは、オックスフォード大学の心理学者であるエレーヌ フォックス教授が名付けたものです。「側坐核」がうまく働いている「楽観脳」の状態とは、その名の通り困難な状況も前向きに捉えられる状態のことを指します。
 健康で問題などを抱えていないときは、脳において「側坐核」へ正常なドパミンとオピオイド分泌が起こり、「楽観脳」の状態が維持され、腰痛が起こってもすぐに治まる機能が働きます。しかし、ストレスや不安が強いと「扁桃体」が過剰興奮し「側坐核」へのドパミンおよびオピオイドの分泌に不具合が生じる「悲観脳」の状態となります。「悲観脳」になると腰痛が治りづらくなることがわかっています。
 また、「悲観脳」は一般に「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンの働きも低下している状態とも言え、うつ的になり睡眠障害も加わって、さらに痛みに過敏になるという悪循環にも陥ります。
 つまり、「不安や恐怖」「心理的なストレス」は脳の機能の不具合を来し、慢性腰痛を引き起こすリスク因子となるのです。

参考:一回3秒これだけ体操 腰痛は「動かして」治しなさい 松平浩著(講談社)
腰痛は脳で治す 松平浩、笠原諭箸(宝島社)
腰痛借金 痛みは消える! 松平浩、勝平純司箸(辰巳出版)






ビデオ6.豪州の取り組み:腰痛患者を減らした国

  

 現代のストレス社会によって腰痛で悩む人が増え続けていることは先進国共通の課題です。この問題に正面から向き合い成果を出している国があります。それは、オーストラリアです。

 オーストラリアでは、腰痛患者を減らすこととそれに関わる無駄な医療費を削減するため大規模なメディアキャンペーンを行いました。
 具体的には、有名人を使い腰痛について最新の正しい情報を伝えながら、腰痛があっても恐がり過ぎず体を動かすことの大切さをテレビなどを通して大々的に訴えました。
 その結果、腰痛があっても活動的に生活する人が増え慢性腰痛患者を減らし、医療費も15%削減することに成功しました。こうした取り組みも基盤となり、イギリスをはじめ西洋諸国の多くの腰痛診療ガイドラインに「 過度の安静は指示すべきでない」といった内容が記されるようになりました。

 ギックリ腰で、お医者さんのところへ行き「動いたほうがいいですよ。仕事にもできるだけ行きましょう。」と言われると「こんなに痛いのにお医者さんはわかってくれない」と思う方もいるかもしれません。でもそれが、世界中のガイドラインに沿った正しい治療の一環なのです。

腰痛は怖くない。腰痛は「動かして」治しましょう。

参考:一回3秒これだけ体操 腰痛は「動かして」治しなさい 松平浩著(講談社)
腰痛は脳で治す 松平浩、笠原諭箸(宝島社)
腰痛借金 痛みは消える! 松平浩、勝平純司箸(辰巳出版)




  



【このWebページ作成の目的】

 国民の多くが一生に一度は経験する「ギックリ腰」。各国の腰痛診療ガイドラインなどは、過度な安静は避け、不安を持たず日常生活を続けることが大切と指摘しています。しかし、未だに多くの国民は、「痛いのだから安静が大事で、動けば大変なことになるかもしれない」という思い込みに囚われています。そのため、かえって慢性腰痛の患者を増やすという結果につながっていると考えられます。このWebページは、最新の腰痛への対応の在り方を国民に伝え、いわゆるギックリ腰から慢性腰痛へ移行する患者を減らし、 国民の健康増進に寄与することを目的とし公開します。


 このWebページは、平成28年度 厚生労働科学研究費補助金「慢性の痛み対策研究事業:慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」の一環として作成しました。
関係の皆様のご協力に深く感謝いたします。

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