toggle
肩の痛み、膝の痛み、腰痛、神経痛など、慢性の痛みに関する総合情報サイト
2018-12-03

Topic No.74
がん疼痛と機能障害に対する経皮的電気刺激(TENS)の効果

The Use of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation (TENS) in a Major Cancer Center for the Treatment of Severe Cancer-Related Pain and Associated Disability
Loh J, et al. Pain Med. 2013 Feb 25. [Epub ahead of print]

要約

重度の慢性的がん疼痛のコントロールにはオピオイドを用いた薬物療法が行われるが,患者は薬物の副作用等にしばしば苦しむ.本研究では副作用がない経皮的電気刺激(TENS)療法にて重度の慢性的ながん疼痛を改善・自己コントロールできるかどうかを後ろ向きコホート研究にて検討した.

方法:
調査期間は2008年11月~2011年2月,対象は慢性的ながん疼痛に対してTENSが処方された患者87名とした.最終的には76名が解析対象となった(乳癌19名,肉腫10名,リンパ腫9名,肺癌9名,大腸癌5名,子宮癌5名,前立腺癌5名・他).
TENS装置にはEMPI Select device(St. Paul, MN, USA)を用い,TENSの設定は患者毎に最適化された.ただし,刺激頻度は80Hz以上とした.TENSする部位は患者が痛みを訴える部位の皮膚とし,特定できない場合は痛み領域を支配する神経根レベルの内側枝領域とした.装置は患者に渡し,自宅でTENSを30分~1時間の1日最低4~6回,強度等の設定は適宜変更するよう指導した.
調査内容としてはTENS施行前と施行1~2ヶ月後のVAS(0-100mm),NRS,簡易型McGill痛みの質問表とした.

結果:
76名中53名(69.7%)の患者からTENSの有効性が報告された.次に76名中,すべての調査内容が得られた55名を,TENSが有効であった患者(40名)と無効であった患者(15名)に分け,各指標を比較した.その結果,TENSが有効であった者はVASが平均9.8mm減少(P<0.001),NRSが平均0.8スコア減少し(P<0.001),また41%の患者においてMcGill痛み質問表の記述内容から痛み症状とQOLの改善が認められた.
一方,TENSが無効であった者に関してはVASが平均12.2mm増加(P=0.015),NRSが平均0.68増加した(P<0.001)し,33%の患者において痛み症状とQOLの悪化が認められた.

コメント

今回,7割の患者において慢性的ながん疼痛に対するTENSの有効性が認められた.一部の患者には無効または逆効果となっているが,これは患者に対する指導に原因があったと思われる. TENSの設定は患者自身によって変更できるように指導したが,どのような設定が最適なのか明らかではない.患者に対する指導を徹底し,最適なTENS 設定を明らかにできれば,TENSは慢性的ながん疼痛コントロールの対して有効な補助的手段となろう.

ホームページ担当委員:中野 治郎