toggle
肩の痛み、膝の痛み、腰痛、神経痛など、慢性の痛みに関する総合情報サイト
2018-12-06

Topic No.100
セロトニン遺伝子は腰椎椎間板ヘルニア術後6か月患者のうつ症状、機能回復、痛みに関連する

Association of serotonin-1A and -2A receptor promoter polymorphisms with depressive symptoms, functional recovery, and pain in patients 6 months after lumbar disc surgery.
Lebe M et al. Pain 154. 2013, 377-384

要約

セロトニン遺伝子のプロモーター領域にあるSNPが腰椎術後の機能と症状に関連するとした論文(ドイツ)

方法:
275人の腰椎椎間板ヘルニア術後(平均6か月)患者に対して、以下の項目と5HTR1A(rs6295)と5HTR2A(rs6311)のゲノタイプの関連を調べた。
1)痛み(NRS)
2)うつ状態(Beck Depression Inventory)
3)身体機能と障害(FFbH-R: 12個の項目のある自記式質問票、Disability score)
尚、5HTR1A(rs6295、-1019C/G functional promotor allele)はCC, CG, GGに5HTR2A(rs6311、-1438A/G promotor SNP)はAA, AG, GGに分類される。

結果:
・ 5HTR2Aについては女性で少なくとも1つのAを持っている人は、高いdepressionスコアをとった。
・ 5HTR1AについてはGGアレルを持つ人は、 Beck Depression Inventoryスコアが高く、うつ状態に強く影響していた。
・女性で5HTR1AのGGアレル、または5HTR2AのAAアレルを持つ人は、身体機能が低かった。
以上より、 5HTR1Aと5HTR2Aのプロモーター領域にあるSNPは、痛みを有する患者のうつ状態や身体機能に性依存性に関わっている可能性が示唆された。

コメント

脊椎手術後の症状が、患者の持っている遺伝子に作用されている可能性があるとことを示した論文。セロトニンは以前よりうつ状態と関連している可能性が示唆されており興味深い。しかし、275人をグループに分けていくと数が少なくなりデータの信憑性に欠ける。手術成績が術者の技量ではなく、患者の持っている遺伝子に作用されるという、外科医としてはなんとなく信じたくない知見である。遺伝子は本当に偉大か?

ホームページ担当委員:川口 善治