Topic No.136テキストメッセージは術中の鎮痛剤使用量を減らす
Text messaging reduces analgesic requirements during surgery.
Guillory JE, et al. Medicine 2015;16:667-672
要約
背景/目的:
音楽、ビデオゲームなどのdistraction(気晴らし)は、不安や鎮痛剤の使用を減らすことが知られている。本研究ではsocial supportがdistractionの一つとして鎮痛剤の使用を減らすかどうか調査した。social supportとして、携帯電話のtext messageを使用した。我々の仮説としては、1:術中の知人とのtext messageは、通常の術中管理より、鎮痛剤の使用を減らす、2:他人とののtext messageは、通常の術中管理より、鎮痛剤の使用を減らすである。
対象/方法:
98例の下半身の局部麻酔の小手術の症例をランダムに他人とtext message群、知人とtext message群、mobile phone game群(distraction control)、control群に分け、術中の鎮痛剤の使用量を比較した。
結果:
知人とtext message群はコントロール群に比べ有意に鎮痛剤の使用量が少なかったが、game群とは差がなかった。他人とのtext message群は、コントロール群とも、game群とも有意に鎮痛剤の使用量が少なかった。知人、他人とのtext message群間には差がなく、game群とコントロール群間にも差がなかった。他人とのtext message群のみがgame群(distraction control)に比べ有意に鎮痛剤の使用量が少なかった
まとめ:
本研究は初めてtext message使用によるsocial supportの利点を証明した。また他人とのtext message群はvideo gameによるdistractionより鎮痛剤の使用量が少ないことを示した。知人との会話では内容が手術に焦点が集まり、不安のフィードバックがおこり、知人から制限されたsocial supportがもたらされたに対し、他人との会話では、より積極的な感情の用語が観察され、自己肯定的なトピックで正のfeedbackが起こったと思われた。
コメント
携帯電話で、音声の他にtext messageでもコミュニケーションをおこなっている。text messageの交換であれば、麻酔、手術を妨げることなく、非薬物療法として、術中の鎮痛に応用が可能であろう。他人とtext message群では、研究内容を知らないリサーチアシスタントが趣味や興味のあることを尋ねるなど、知り合いになるためのトピックに焦点をあてた会話をしたようである。正のsocial supportになるためには、ある程度の会話力が必要と思われる。
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