Topic No.162パーキンソン病における持続痛の解剖学的および機能的相関
Anatomical and functional correlates of persistent pain in parkinson’s disease.
Polli A, et al. Mov. Disord.2016; Epub ahead of print
要約
背景:
パーキンソン病(PD)における疼痛の病態生理は,脊柱上のメカニズムが疼痛の発生および持続に関与することも考えられるが,未だほとんど解明されていない。
方法:
40名のPD患者(持続痛の有る20名と痛みの無い20名)において,持続痛に関連する脳機能および解剖学的変化を調べた。また,対照群として,同様の年齢,性別,および認知状態である15名の痛みの無い健常者を検討した。神経因性症状に対して,King’s Parkinson’s Pain Scale,痛みのVAS,Leeds Assessmentを評価した。すべての患者において,拡散テンソル画像と安静時fMRIにて構造的解析した。臨床的特徴,脳全体の皮質厚,皮質下容積,拡散テンソル画像のスカラー量測定,ネットワーク解析による機能的結合を比較した。
結果:
PDで持続性疼痛を有する群は,両側の側頭極,左内側の眼窩前頭皮質,両側上/左下頭頂領域,眼窩部,右上前/後帯状回,中心前回の皮質において有意な容積減少を示した。痛みの無いPD群との間に,白質と皮質下容積で有意差は認めなかった。fMRIにおいて,持続痛の有るPD患者群では左下前頭の眼窩部の脳活動低下,両側の小脳と右下側頭領域の高い活動増加を伴っていた。持続痛の有るPD群のみで,白質と皮質下の変化のない側坐核‐海馬のネットワーク分離を示した。
結論:
PDにおける持続痛は,脊柱上の構造的および機能的変化に関連している。また,痛覚変調と側坐核-海馬のネットワーク分離における前頭と前頭前野,および島領域の寄与が明らかにされた。
コメント
最近の研究により,扁桃体と心的ストレス,海馬と身体活動など脳機能と行動変化の関係および認知行動療法や運動療法の効果,また本研究のような,慢性疼痛による神経学的経路(脊髄-脳幹,扁桃体,海馬,視床,島,帯状回,前頭前野,体性感覚野などのループ)の変調が明らかにされつつある。本研究は疾患特異的な,PDにおいて脳内神経ネットワークの一端を解明したことは臨床的意義が高い。さらに,この発見は,PDに対するリハビリテーションにより運動機能のみならず,痛み関連の脳機能改善も示唆され興味深い結果である。
ホームページ担当委員:園田 悠馬