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2018-12-04

Topic No.84
人工膝関節置換術後の疼痛コントロール〔術中関節内浸潤麻酔VS大腿神経ブロック〕

Pain control after primary total knee replacement. A prospective randomized controlled trial of local infiltration versus single shot femoral nerve block.
Ashraf A, et al. Knee. 2013 Oct;20(5):324-7.

要約

背景/目的:
人工膝関節置換術後の疼痛コントロールとして、大腿神経ブロック(femoral nerve block; FNB)は良く使われる方法である。鎮痛効果に優れるため、膝の可動域の獲得が早く、入院期間も短縮されるなどの利点がある。しかし、手技に時間を要し、超音波診断装置が必要である。さらに、大腿四頭筋の機能低下による転倒事故や、FNB後の神経炎や神経損傷の原因にもなる。
最近は、術中に関節内に数種類の薬剤のカクテルを局所に浸潤させる鎮痛法(local infiltration analgesia; LIA)の報告が増えている。本研究ではFNBとLIAの比較をRCTで行った。

方法:
麻酔は脊椎麻酔(0.5% bupibacaine)を行い、propofol で鎮静を行った。
人工膝関節は、全例骨セメントを使用して設置し、術後は疼痛に応じてオピオイド、NSAIDs の処方を行った。
鎮静後にFNBとLIAのいずれかに割り付けを行い、FNB:21症例、LIA:19症例が最終的に解析可能であった。
●手技
FNB 群
超音波ガイド下にワンショットのFNBを行った。薬剤:0.2% ropivacaine, 30 ml
LIA 群
術中に膝関節の全ての面に薬液を浸透させた。
薬剤:0.2 % ropivacaine, 150 ml、1:1000 adrenaline, 1ml、ketolorac, 30 mg(NSAIDs)

結果:
術後4時間のVAS と morphine 総使用量にのみ有意差を認めた(下表)。

コメント

人工膝関節置換術後の疼痛は比較的大きい。そのため、様々な鎮痛方法が行われてきた。本邦でも、数年前までは持続硬膜外麻酔による鎮痛が広く行われていたが、術後の静脈血栓塞栓症(VTE: Venous Thromboembolism)予防に抗凝固剤を使用するようになったため、その頻度は減少しつつある。 大腿神経ブロックと、カクテル療法と呼ばれる局所浸潤法は最近頻用されるようになりつつある鎮痛方法である。カクテル療法の優位性を報告する論文も多いが、報告により使用薬剤が異なる点や、ステロイドの使用の可否などが今後の解決すべき問題である。また、在院日数が長めで、翌日に離床するとは限らない本邦では、持続大腿神経ブロックによる鎮痛も今後増える可能性がある。

ホームページ担当委員:園畑 素樹