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2018-12-07

Topic No.121
変形性手関節症における手の心的表象の変容

Evidence for distorted mental representation of the hand in osteoarthritis. Rheumatology.
Gilpin HR, Rheumatology (Oxford). 2014 Sep 22

 

要約

背景/目的:
慢性疼痛患者では,心的表象での身体サイズが変容していることが報告されている.例えば複合性局所疼痛症候群では,実際の身体よりも主観的に感じている身体の方が大きいと報告されている.また,心的表象での身体サイズが変容している者は,1次体性感覚野をはじめとする大脳皮質の可塑的変化が生じていることも明らかにされている.近年,身体サイズを操作した視覚フィードバックが痛みの軽減に有効であることも報告されている.本研究は,身体サイズを操作した視覚フィードバックが,手の変形性関節症患者の心的表象に及ぼす影響を調査したものである.

対象/方法:
対象は12名の手の変形性関節症と,12名の健常者(コントロール群)とした.
実験では,「Newport MIRAGE 多感覚錯覚システム」を用いた.図のように手をデバイスの中に入れると手が伸縮する映像が映し出され,あたかも自分の手が伸縮したような錯覚が惹起されるシステムである.実験では,手が伸びた錯覚をする条件(Stretch条件),手が縮んだ錯覚をする条件(Shrink条件),通常サイズの手を見る条件(No illusion条件)を各30秒間ずつ実施した. 心的表象での身体サイズの評価は,徐々に大きさが変化していく手を映像に映し出し,その映像と心的表象での身体サイズとマッチングする大きさを選択するという方法で評価した.

結果:
○ 変形性関節症患者では,コントロール群と比較して,No illusion条件では心的表象での身体サイズが小さかった.一方,Stretch条件・Shrink条件においては,コントロール群と差が認められなかった.
○ No illusion条件において,コントロール群と比較して心的表象での身体サイズが小さいという結果から,手の変形性関節症では心的表象の変容が生じていることが明らかとなった.一方で,Stretch条件およびShrink条件において,コントロール条件と同様に心的表象での身体サイズが変化した.これは,変容した心的表象での身体サイズが視覚フィードバックを用いた錯覚により変化する(改善する)という可能性を示した結果である.

コメント

本研究は,変容した身体表象を錯覚デバイスによって改善させることができる可能性を示したものである.身体表象の変容は,複合性局所疼痛症候群・幻肢痛・慢性腰痛などの運動器疼痛疾患でも認められることが報告されており,今後はそれら疾患を対象にした効果が期待される.

ホームページ担当委員:大住 倫弘