Topic No.145変形性膝関節症患者に対する鍼治療は、脳機能画像検査において、皮質の厚さ及び機能的結合を変化させる。
Acupuncture modulates cortical thickness and functional connectivity in knee osteoarthritis patients.
Chen X, et al. Sci Rep. 2014 Sep 26;4:6482.
要約
はじめに:
変形性膝関節症は非常に多い疾患であるが、その治療法はまだ完全ではない。近年、中脳水道周囲灰白質(PAG)の活動が上昇したり、島(Insula)、帯状回、視床、海馬などの血流が増えている現象が見られ、中枢機能性の疼痛であると示唆されている。
方法:
Kellgren-Lawrence分類2から3の変形性膝関節症30症例 を3群にランダムに割り付け(多数箇所の鍼治療群:10, 少数箇所の鍼治療群:10、シャム鍼治療群:10)症状の変化と機能性結合の変化を比較した。
結果:
鍼治療を行うことで、痛みが改善し、スポーツ活動やQOLの向上が見られた。
左内側前頭前皮質(pMPFC)の皮質の厚さ(cortical thickness)は介入後シャム群では低下したが、鍼治療群では低下しなかった。
Resting stateでの機能性結合は左内側前頭前皮質(pMPFC)と中脳水道周囲灰白質(PAG)、 前内側前頭前皮質(aMPFC), 吻側前帯状回(rACC),腹側線条体(VStri)の間で鍼治療群で大きくなっていた。
コメント
この研究では、わずか4週間の鍼治療で、脳機能画像的な変化が観察されている。内側前頭前皮質は負の感情の抑制に関連するとされており、吻側前帯状回はワーキングメモリーや感情の抑制に関連するとされており、腹側線条体は意思決定に関与するとされており、これらの認知・情動に関する部分を通じて、鍼治療での鎮痛やADL向上が起こっているのかもしれない。この研究の問題点としては、鍼治療群とシャム治療群の治療前の左内側前頭前皮質(pMPFC)の皮質の厚さ(cortical thickness)に違いがあり、治療効果を示しているのか、その他の要素が関連するのかが不明である。
ホームページ担当委員:三木 健司