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2018-12-13

Topic No.174
椎間板変性でのNSAIDの使用:in vivoでの基質恒常性への効果

NSAID use in intervertebral disc degeneration: what are the effects on matrix homeostasis in vivo?
Vaudreuil N, et al. Spine J 2017; 17: 1163-1170

 

要約

背景:
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腰痛に対し広く使用されている。関節軟骨に対してNSAIDの有害な影響が報告されているが、椎間板変性におけるNSAIDの与える影響の報告は殆どされていない。椎間板変性は腰痛症の主原因であり、我々は一般的に使用されるNSAIDであるインドメタシンが動物の椎間板変性モデルにおいてどう影響を与えるかを調査した。

目的:
本研究はin vivo兎椎間板変性モデルにおいて、インドメタシン経口投与が椎間板変性に与える影響を調べる事を目的とした。本研究ではインドメタシン使用が画像および組織学的に椎間板変性を悪化させるという仮説をたてた。

方法/デザイン:
本研究はインドメタシン経口投与がウサギの椎間板に与える生体内での影響を調査した研究室ベースの比較試験である。6匹の骨格が成熟したニュージーランド白兎を、椎間板変性を惹起するための椎間板穿刺のみを行った群(puncture群)と椎間板穿刺に加えインドメタシン投与を行った群(punc + Ind群)の2群に分けた。Punc+Ind群では連日6mg/kgのインドメタシン経口投与を行った。MRIを0, 4, 8, 12週で経時的に撮影した。MRI indexおよび髄核領域を計測した。12週で椎間板を採取し、グリコサミノグリカン含有量の測定、リアルタイムPCRによる遺伝子の相対的発現解析、および組織学的解析を行った。

結果:
Punc + Ind群のMRI indexおよび髄核面積はPuncture群と比較して遜色なく、椎間板変性の増悪は見られなかった。組織学的評価ではPunc+Ind群でより変性が軽度であった。細胞外基質関連の遺伝子発現にはPunc+IndおよびPuncture群間でわずかに差がみられた。インドメタシン投与をうけた動物では、線維輪、髄核、および非損傷椎間板に隣接する髄核でグリコサミノグリカン含有量が高かった。

結論:
インドメタシン経口投与はin vivo兎椎間板変性モデルにおいて椎間板変性を増悪させなかった。インドメタシンの長期投与およびその他のNSAIDが椎間板の基質恒常性に与える影響を究明する将来研究が必要である。

コメント

NSAIDsは腰痛症や変形性関節症に頻用される。シクロオキシゲナーゼ1,2(COX-1, COX-2)を阻害することでプロスタグランジンE2(PGE2)などの炎症性メディエーターの産生を抑制し、鎮痛作用が得られる。関節軟骨においてPGE2は基質の異化や同化に関与するとされ、長期的投与が変性進行に影響するとの報告があるが、椎間板変性に対してのNSAID投与の影響の報告は稀である。本研究では仮説とは反対にインドメタシンは椎間板変性を抑制する方向に作用していたが、サンプル数が少ない事や1種類のNSAIDしか評価していないことが研究の限界と考えられる。今後、NSAIDが椎間板の細胞外基質に与える分子生物学的機序の解明や、長期投与で椎間板変性発生にどう影響を与えるかの解明が待たれる。

ホームページ担当委員:尾市 健