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2018-12-11

Topic No.153
無症状の集団における脊椎変性画像所見についてのシステミックレビュー

Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations.
Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al.

 

要約

背景/目的:
腰痛患者においても、無症状の個人においても、脊椎の変性変化はよく観察される。本研究の目的は、システミックレビューにより、無症状の個人において、年齢階層ごとの変性所見の有病率を調査することである。

対象/方法:
無症状例とは、過去に腰痛の経験のない個人とした。33論文の3110症例を対象とした。32論文はMRIの、1論文はCTによる検討であった。

結果:
無症状例の椎間板変性の有病率は20歳代では37%、80歳代では96%で、50歳代以上になると急速に増加した。Disk protrusionと線維輪の断裂は全ての年代に中等度存在し、加齢により増加しなかった。脊椎すべり症は60歳代以下ではあまり認められなかった。

考察:
本システミックレビューで、脊椎変性所見は無症状例において高い確率で見られることが示された。このような変性所見は病的な変化というよりも正常な加齢変化とみなすべきだ。MRI画像は変性所見を検出するのに感度が非常に高いが、腰痛患者においてMRIの変性所見と腰痛とは必ずしも関連しないことが報告されている。腰痛保存療法におけるMRIの予後予測的な役割のシステミックレビューで、画像所見と臨床アウトカムの関連を示すことに失敗している。さらに重要なことに、画像所見と外科治療のアウトカムとの関連もよく確立されていない。過去の研究と合わせて本研究は、腰痛患者の画像所見の臨床的意義を解釈するとき、同年代の無症状例画像の有病率の知識の重要性を強調する。加齢による変性所見と痛みを起こすような変性所見を区別するような診断基準を作る重要性を強調する。

コメント

画像所見と痛みの関連が低いことは報告されているが、本研究でも無症状例に変性所見の有病率が高いことが示された。「椎間板の変性がある」と説明するのと、「椎間板の変性があるけれど、同年代の痛みのない人でも何%ある」と説明するのでは、患者の受け止め方が大きく変わってくると思われる。悪い情報はFear avoidance modelで、悪循環に入る因子のひとつと考えられている。画像所見が悪い情報にならないように解釈、説明が必要と思われる。

ホームページ担当委員:内山 徹