Topic No.175睡眠障害の持続・発症:慢性腰痛患者のアウトカムとの関連についての前向きコホート研究
Persistent and Developing Sleep Problems: A Prospective Cohort Study on the Relationship to Poor Outcome in Patients Attending a Pain Clinic with Chronic Low Back Pain.
Pakpour AH, at al. Pain Pract 2017; Epub ahead of print
要約
背景:
睡眠障害は腰痛に悩む人の共通の問題であり、睡眠障害と腰痛の関連を示唆する報告は多い。しかし、睡眠障害の経時的変化(持続・発症・改善)と腰痛のアウトカムの関連を前向きに調査した報告はない。そこで、慢性腰痛患者のアウトカムに対する睡眠の影響について前向きコホート研究で実施した。
方法:
対象は、慢性痛クリニックを受診した慢性腰痛患者761名とした(3ヵ月以上持続する腰痛)。ベースライン時に、腰痛の程度(VAS)、Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を評価した。6ヵ月後に、VAS、PSQIおよび患者が感じる回復レベル(6分類:completely recovered~much worse)を評価した。腰痛の改善は、6か月後にVASが0~1と回答した場合とした。患者が感じる回復レベルは、回復群(completely recovered, much better, better)と非回復群(worse, much worse)に区分した。睡眠は、PSQIの値が5以上の場合に睡眠の問題ありとした。研究期間中、対象者は同クリニックにて通常の痛み治療(患者教育、薬物(NSAIDS)、理学療法)を受けていた。
結果:
ベースラインで睡眠に問題がある群は、問題がない群に対して6ヵ月後の患者が感じる回復レベル(Adjusted odds ratio [aOR]: 1.50)および腰痛の程度(aOR: 2.48)は不良であった。ベースライン時は睡眠に問題がなかったが、その後睡眠の問題が生じた群(回復aOR: 2.17, 痛みaOR: 2.88)も、ベースライン時・6ヵ月後共に睡眠に問題があった群(回復aOR: 2.95, 痛みaOR: 3.45)も、患者が感じる回復レベルおよび腰痛の程度の結果は不良であった。ベースライン時に睡眠に問題があったが、その後睡眠の問題が改善した群では、6ヵ月後の患者が感じる回復レベル(aOR: 0.50)および腰痛の程度(aOR: 0.49)は良好であった。
結論:
今回の結果から、睡眠障害の経時的変化と慢性腰痛患者のアウトカムは関連しており、睡眠障害は慢性腰痛患者のアウトカムに対する重要な予後不良因子であることが示唆された。
コメント
この研究は、睡眠障害(睡眠の質の低下)の持続・発症・改善と慢性腰痛のアウトカムとの関連を前方視的に調査しており、抑うつ・不安や痛みの持続期間などの交絡を調整した上で得られた本研究結果は興味深い。今回の結果から、経時的変化を考慮したサブ解析から睡眠が腰痛のアウトカムに与える影響が明らかとなり、慢性腰痛患者への治療方策として睡眠の問題も評価・対処するとともに、睡眠の問題を引き起こすリスク要因についても目を向けることが重要であると考える。
ホームページ担当委員:吉本 隆彦