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2018-12-10

Topic No.137
糖尿病は人工膝・股関節置換術後の疼痛に影響する

Diabetes is associated with persistent pain after hip andknee replacement
Rajamäki TJ. et al Acta Orthop. 2015 May 8:1-8.

 

要約

目的:
人工膝関節置換術(TKA)・人工股関節置換術(THA)後の遷延痛と、糖尿病・メタボリックシンドローム・肥満との関係を調査すること

方法:
人工膝関節置換術(80症例)、人工股関節置換術の患者(54症例)を対象とした。糖尿病、メタボリックシンドローム、空腹時血糖異常、耐糖能異常、肥満などを調査し、術後1~2年時の術後関節痛、術後遷延痛(3か月以上毎日痛い)との関係を調査した。

結果:
・37%の患者が術後関節痛を訴えており、14%の患者が3か月以上持続する術後遷延痛を訴えていた。

・術後関節痛・術後遷延痛ともに、THA後よりTKA後の患者に有意に多く認めた。

・術前の糖尿病は、術後遷延痛の危険因子となっていた。

・メタボリックシンドロームや糖代謝異常は術後関節痛・術後遷延痛ともに危険因子とはなっていなかった。

・BMI30以上は術後関節痛の危険因子となっていた。

コメント

近年、術後遷延痛(Chronic Post Surgical Pain: CPSP、Severe Persistent Post-surgical Pain: PPP)の概念が広く認知されるようになり、本論文のような研究が増えてきている。糖尿病や肥満は人工関節の成績不良因子の一つであることが報告されてきているが、メタボリックシンドローム、糖代謝異常、糖尿病、肥満の4つのカテゴリーに細分しての詳細な報告は初めてのものである。
国際疼痛学会の術後遷延痛のリスクファクターは示されているものの、これらはあくまで一般的なものであり、各術式による特殊な要因も他に存在する可能性はある。今回の報告では、糖尿病は術後遷延痛のリスクファクターであるとされている。しかし、糖尿病が下肢の人工関節置換術に特徴的な術後遷延痛のリスクファクターであるのか、術後遷延痛の一般的なリスクファクターであるかは不明である。今後のさらなる研究結果をまちたい。

ホームページ担当委員:園畑 素樹