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2018-12-06

Topic No.103
胸椎病変における低侵襲手術:経皮的 vs Hybrid(経皮的+オープン)アプローチ

Minimally Invasive Treatment of the Thoracic Spine Disease: Completely Percutaneous and Hybrid Approaches.
Francesco Ciro T. et al. Minim Invasive Surg. 2013;2013:508920

要約

背景/目的:
低侵襲脊椎手術のひとつに経皮的に椎弓根スクリューを挿入し固定する方法があるが上位胸椎では術中のイメージで確認できないので経皮的に椎弓根スクリューを挿入する事は困難である。イメージで椎弓根確認できないような胸椎部位には一部オープンで椎弓根スクリュー挿入し経皮的に挿入できる部位には経皮的に手術を行った所謂Hybrid approachで行った胸椎後方固定術の有用性について検討した。

方法:
完全に経皮的に椎弓根スクリューを入れた4症例(男性2、女性2)(completely percutaneous)、一部オープン+経皮的にスクリュー挿入(Open percutaneous combined approach: OPCA)6症例(男性2、女性4)を対象(Table 1)。 術後1,3、8、12ヶ月に臨床症状、またCTにて椎弓根スクリュー刺入の正確さを評価した(Youkilis’s method)。

結果:
手術技術に伴う合併症は無かった。出血はOPCAで250cc、completely percutaneousで100ccだった。椎弓根スクリューの正確さの判定ではOpenで刺入した分は22/24例で適切な位置に刺入されておりcortical violation 2mm以上は2例だがacceptable。経皮的では63/70本は正確で5本はcortical violation(+)だがacceptableであった。全例、二日目には歩行開始し術後3~5日目には腫瘍で神経症状があり転院した二例を除き退院した。 instrumentation failureは無く術後一年では全例独歩可能だった。

考察:
胸椎骨折はhigh energy traumaにより引き起こされ肋骨骨折や肺挫傷等を併発している事が多い。よって早急に胸椎の安定化を行うことで呼吸機能を保つことが結果として潜在的かつ致死的な呼吸器合併症を防ぐことができる。経皮的に椎弓根スクリューを刺入する際に上位胸椎だとイメージで肩と重なり、また亀背が強いとイメージ下で椎弓根を確認することが困難である。イメージを亀背にあわせ椎体がきちんと確認できるように頭尾側の方向を合わせることができれば椎弓根が楕円形に見える。そしてガイドが椎体を通る前に椎弓根の内側に留まるように刺入すればスクリューが脊柱管内に誤刺入されることを防ぐことができる。低侵襲手術は術後の回復も良く一年後の結果は良好であった。

コメント

椎間板ヘルニアに対して内視鏡下手術と通常のオープン(LOVE法)と比較した場合、術後早期の痛みは内視鏡の方が明らかに少ない。脊椎固定術なら肋骨の基部まで展開する必要があるが経皮的に椎弓根スクリューがすべて挿入できなくても部分的にオープンで挿入するHybrid法で刺入できれば全てオープンで行うよりも明らかに低侵襲である。今回、術直後の痛みまではこの論文では論じていなかったが低侵襲脊椎手術における術後超早期の疼痛比較も今後重要な研究課題であると思われる。

ホームページ担当委員:今村 寿宏