Topic No.37腰痛に対するプライマリケアにおける治療:階層化された治療法(STarT Back)と従来の治療法とのランダム化比較試験
Comparison of stratified primary care management for low back pain with current best practice (STarT Back): a randomized controlled trial.
Hill JC, et al. Lancet. 2011 Oct 29;378(9802):1560-71. Epub 2011 Sep 28.
要約
腰痛患者をスクリーニングツールを用いて、低・中・高リスク群の三群に階層化して治療する方法(STarT Back)が従来の治療法と比較して効果があるか、費用対効果はどうかについての比較研究(イギリス)。
方法:
18歳以上の1573名の腰痛患者をリクルートし、試験参加の承諾を得た851名を2対1の割合でSTarT Back使用群とコントロール群にランダムに割り付けた。STarT Back使用群では最初に9項目からなる質問票で三群に階層化し、低リスク患者は「Get Back Active」というタイトルの15分の教育ビデオと「Back Book」という本を渡され、エクセサイズと日常生活や仕事についてのアドバイスを受けた。中・高リスク患者については上記に加えて、理学療法士による30分または45分の治療、3ヶ月間に6回の講習会など、リスクに応じたプロトコルに沿った治療を実施した。
主評価項目は12ヵ月後のRoland and Morris Disability Questionnaire(RDQ)とし、副次評価としてEQ5D, HADS, Pain Catastrophizing Scaleなどを使用した。
結果:
RDQは4ヶ月および12ヶ月時点のいずれにおいてもSTarT Back使用群が良好な結果となり、コストもコントロール群に対して低く抑えることができた。
低リスク患者では両群間の治療成績は同等であったものの、休業期間は使用群の方が少なかった。中リスク患者では使用群の方が治療成績が良好であったが、高リスク患者では4ヶ月時点では使用群が良好であったものの、12ヶ月時点では成績に差はなかった。
コメント
腰痛は予後が良好なものとリスクが高いものとをきちんとスクリーニングし、それらに応じた治療を行うことが有効であることを示した比較試験である。日常診療の経験則に合致する結果であり、本邦でもプライマリケアで積極的に使用するシステム作りが必要と思われる。ただ、気になるのは高リスク患者は結局このやり方でも有効とは言えないのであり、腰痛診療はまだまだ発展途上であることを痛感させる論文である。
ホームページ担当委員:原 慶宏