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2018-12-04

Topic No.83
膝関節痛の増減とMRIにおけるbone marrow lesions、関節水腫、滑膜炎の変化

Fluctuation of knee pain and changes in bone marrow lesions, effusions, and synovitis on magnetic resonance imaging.
Zhang Y, et al. Arthritis Rheum. 2011 Mar;63(3):691-9

要約

背景/目的:
変形性膝関節症においてMRIで指摘することができるbone marrow lesions(BML)、関節水腫、滑膜炎は膝関節痛と関係していると過去に報告されている。しかし、その変化が軽快した場合には、痛みも良くなるかということに関しては情報が不足している。本研究では、BML、関節水腫、滑膜炎の可逆性変化が痛みの増減と関係しているかを調査した。

方法:
変形性膝関節症の患者570例(651膝)を対象にした多施設による縦断的検討を行った。ベースラインとその15か月目、30か月目にMRI撮影およびWestern Ontario and McMaster Universities Arthritis Index(WOMAC)による膝関節痛評価を行った。MRI評価はWhole-Organ Magnetic Resonance Imaging ScoreWORMS)を用いた。

結果:
BML、滑膜炎、関節水腫が増悪したのは、それぞれ36.8%、24.2%、24.4%であり、軽快したのは27.8%、11.0%、13.2%であった。BMLと滑膜炎が重症化すれば、膝関節痛を認めるリスクが有意に多くなっていた。経時的変化では滑膜炎と関節水腫が増悪すれば、膝関節痛も有意に増悪するのに対して、BMLはサイズが縮小すれば、膝関節痛も軽快した(下表)。

コメント

本研究の結果、BML、滑膜炎、関節水腫は、可逆的に変化し、その変化が痛みの増減と関係していることが示された。変形性膝関節症において、疾患修飾性治療薬がない現時点では、治療は膝関節痛の疼痛制御が主体となっているといっても過言ではない。BML、滑膜炎、関節水腫は治療目標の1つとして有用である可能性がある。

ホームページ担当委員:阿漕 孝治