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2018-12-12

Topic No.164
膝OA患者に対する理学療法士による認知行動療法と運動療法を組み合わせたプログラムの無作為化試験

Physical Therapist-Delivered Pain Coping Skills Training and Exercise for Knee Osteoarthritis: Randomized Controlled Trial.
Bennell KL, et al. Arthritis Care Res, 2016; 68: 590-602

要約

目的:
理学療法士が提供する認知行動療法にもとづいたペインコーピングスキルトレーニング(PCST)と運動療法を組み合わせたプログラム(PCST/運動療法)は、それぞれを単独で実施した場合と比べて治療効果および費用対効果が高いのかを検証した。

方法:
222名の膝OA患者(50歳以上)を無作為にPCST/運動療法群(73名)、運動療法群(75名)、PCST群(74名)に振り分けた。PCSTは認知行動療法にもとづいた痛みの教育とコーピングスキルの習得、運動療法は筋力増強運動で構成され、12週間で10回の外来とホームワークによって介入がおこなわれた。一次アウトカムは主観的な痛みの強さ(100mmVAS)と身体機能(WOMACの下位尺度)とし、二次アウトカムはその他の痛みの指標(過去1週間の歩行時痛の平均、WOMACの下位尺度)、QOL、身体活動量、自己効力感、破局的思考、コーピングスキル、抑うつ・不安・ストレス、運動機能検査、費用対効果として、介入前、12週間後、32週間後、52週間後に評価した。

結果:
12、32、52週間後において、PCST/運動療法群とその他の群の間で主観的な痛みの強さの改善には差がなかった。一方、身体機能はPCST/運動療法群とその他の群と比べて有意に大きく改善した。二次アウトカムの多くはPCST/運動療法群で改善効果が高かったが、費用対効果は群間差を認めなかった。

コメント

CBTが臨床心理士ではなく、理学療法士によって高い水準で提供することができうることを報告(Topics No.133)したグループによる研究で、理学療法士による認知行動療法と運動療法の組み合わせが膝OA患者の身体機能をはじめ、身体活動量や心理・精神機能、QOLなどで優れた改善効果をもつことを示した。この介入で認知行動療法を行った理学療法士は十分なトレーニングを受けたうえで、標準化された手順で認知行動療法を提供していた。費用対効果では、それぞれ単独の介入と有意差がみられなかったものの、スタッフの不足により心理的アプローチの提供が十分できなかった施設においても応用可能な知見であり、日本の疼痛医療現場でも非常に参考になると考える。

ホームページ担当委員:下 和弘