Topic No.112若年線維筋痛症患者に対する認知行動療法(CBT)の治療反応例と、改善予測因子の同定
Identifying treatment responders and predictors of improvement after cognitive-behavioral therapy for juvenile fibromyalgia.
Sil S. et al. Pain. 2014 Mar 17
要約
背景/目的:
CBTは小児慢性痛に有効であり、若年線維筋痛症にも有効であるという報告がある。しかし、これらの報告では必ずしも臨床的に意味のある程度の改善があるとは言えない。機能障害はFunctional Disability Inventory(FDI)が小児の慢性痛に対するCBTの効果判定に用いられるが、臨床的に有意な変化について確立したガイドラインはない。
この研究の主要な目的は若年線維筋痛症患者に対するCBTの治療反応例と非反応例を同定するために臨床的有意性を評価することである。副次的な目的は研究開始時の機能障害(functional disability inventory: FDI)、痛みの自己効力感(pain coping questionnaire: PCQ)、両親の痛みの病歴が、6か月後の機能障害を予測するかどうかである。
方法:
研究参加者は100名の若年線維筋痛症患者(11~18歳)で、最近公表された「CBTと、線維筋痛症に対する教育(FE)の比較研究」の参加者である。適応基準は、
①Yanus and Mesiの線維筋痛症の診断基準を満たす
②8週間内服治療が安定している
③一週間のVASが4/10以上で線維筋痛症による機能障害がみられることである。
患者は無作為にCBT群かFE群に振り分けられた。両者とも熟練した治療者により8週間の治療を受けた。線維筋痛症教育とは、線維筋痛症についての情報、その治療、健康的な生活習慣について教育した。FDIとは小児の日常活動の困難さを15の質問票で評価するもので、0~60点で高いほうが困難度は高い。臨床的有意性の評価にはanchor-based approachとdistribution-based approachがあるが、両者を混合した方法を用いた(詳細略)。
結果:
患者は機能障害で7.8ポイントの減少がみられたとき、FDIで減少の見られたときに有意に変化したと定義した。この厳格な基準に従うと、CBT群の40%は改善とされたが、FE群は28%の改善であった。CBT群では初診時の機能障害が高く(OR 1.13 95%CI 1.03-1.23)、自己効力感が高いほう(OR 1.56 95%CI 1.01-2.43)が有意な機能改善が得られた。痛みの強さ、うつ症状、両親の痛みの病歴は治療反応例の予測に関係なかった。
コメント
今回の研究では臨床的に有意となる数値を高く見積もったことで、治療効果を強力に説明できる。研究者がより効果のある患者に合った治療法を開発できるという意味で臨床研究の価値を高める可能性がある方法である。
ホームページ担当委員:西江 宏行