Topic No.124補償方針の違いが、初回腰椎固定術の固定方法、安全性、費用にどのような影響を及ぼすか?
How do coverage policies influence practice patterns, safety, and cost of initial lumbar fusion surgery? A population-based comparison of workers’ compensation systems.
Martin BI et al. Spine J. 2014 Jul 1;14(7):1237-46.
要約
背景/目的:
特に労働者において、有効性がはっきりしないにも関わらず、腰痛改善のための固定術が増加するのに応じて、ある保険会社は制限された補償方針を立てている。ワシントン州の労災プログラムでは不安定性の画像的診断を必要とし、初回固定は一椎間に制限している。一方カルフォルニア州ではセカンドオピニオンが手術を支持するなら、初回多椎間固定と手術固定材料の追加償還を許可している。いままでに、固定術の利用、コスト、安全性において、補償方針の違いによる差の調査はない。本研究の目的は、異なった補償方針をもつ2つの州の人口に基づいたデータを対象として、固定方法、3ヶ月以内の合併症、費用について比較することにある。
対象/方法:
2008-2009年のカルフォルニア州とワシントン州の労災患者の入院データを分析した。変性疾患の入院での腰椎固定術が行われたすべての患者(4628例)を含めた。再固定術、再入院、生死に関わる合併症、創傷合併症、インプラントの合併症、費用について分析した。
結論:
○ 腰椎固定術の割合は、ワシントン州に比べカルフォルニア州では47%多く行われていた。
○ カルフォルニア州の労災患者では、脊柱管狭窄、すべり症とは対照的に、非特異的腰痛、腰椎椎間板ヘルニアなど議論の別れる適応でより多くの固定術が行われていた。
○ カリフォルニア州では前後合併手術、3椎間以上の固定、骨形成因子の使用がより多くの割合で行われていた。
○ カルフォルニア州では再手術、創傷合併症、インプラントの合併症、生死に関わる合併症のリスクがより高かった。費用もカルフォルニア州の方が多かった。
まとめ:
固定術の補償の範囲が広いことは、より多くの固定術、より侵襲の高い手術、より多くの再手術、より高頻度の合併症、より多くの入院コストと関連していた。
コメント
いくつかのRCTで、腰椎固定術の腰痛に対する効果は保存療法より有効だが、計画されたリハビリと同等の効果に過ぎないにもかかわらず、安全性が低く、より費用がかかると報告されている。このような観点から、アメリカでは、腰椎固定術において補償範囲を制限する州がではじめ、制限のない州と比較すると、固定方法、安全性、費用の面で明らかな差が示された。財源は限られているので、費用が多いにもかかわらず、合併症が多い手技を続けることは議論を呼ぶかもしれない。
ホームページ担当委員:内山 徹