Topic No.72髄損傷患者における慢性疼痛と抑うつ、慢性疲労、自己肯定感の関係モデルの構築
Developing a model of associations between chronic pain, depressive mood, chronic fatigue, and self-efficacy in people with spinal cord injury.
Craig A, et al. J Pain. 2013 May 23 In press.
要約
脊髄損傷患者においては、慢性疼痛が抑うつを強くするが、自己肯定感によって軽減される。一方、痛みと抑うつはそれぞれ独立して慢性疲労を増強させる。(オーストラリア).
方法:
コミュニティで生活している脊髄損傷患者70名に対してインタビューを実施した。抑うつの指標としてThe Profile of Mood States (POMS)を、痛みの程度の指標としてThe Short-Form McGrill Pain Questionnaire(SFMPQ)を、慢性疲労の指標として、POMSの疲労ドメインとChalder Fatigue Scale(CFS)を、自己肯定感の指標としてthe Moorong Self-Efficacy Scale(MSES)を使用した。多変量解析および分割表解析、階層化分析を行い、それぞれの因子間の関連をモデルとして構築した。
結果:
慢性疼痛の痛みレベルの高い患者は抑うつが強く不安と怒りが強く、自己肯定感が低い。慢性の強い疼痛は抑うつを8倍にし、慢性疲労を9倍にするリスクがある。
多変量解析では慢性疼痛は抑うつを強くはするが、その効果を自己肯定感が減弱させることが分かった。慢性疼痛・抑うつはそれぞれ独立して慢性疲労を強くする。
コメント
脊髄損傷患者の慢性疲労の原因はこれまで抑うつ状態から生じると考えられていたため、その治療は抑うつ状態の改善を目指したものであった。 本研究の結果からは、慢性疲労が抑うつだけではなく痛みからもほぼ同等のリスクで生じることが分かった。今後は慢性疲労の治療として痛みの治療を積極的に取り入れていくことが重要と考えられる。また、自己肯定感が抑うつを改善させることも明らかとなっており、治療における認知行動療法の重要性が示唆される。
ホームページ担当委員:原 慶宏