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2018-12-10

Topic No.134
高齢者の腰痛に対する早期画像診断と臨床経過の関連

Association of early imaging for back pain with clinical outcomes in older adults
Jarvik JG,et al. JAMA 2015; 313:1143-53

 

要約

はじめに:
壮年期の患者に比して、65歳以上の患者が腰痛を訴えた場合には4-6週間の経過観察後に画像診断を検討するように推奨されていることが多い。腰下痛を訴える65歳以上の患者を対象について、早期画像診断を実施した患者群と早期には画像診断を実施しなかった患者群の12ヶ月後の痛みやQOLについて調査した。

方法:
○5239人の65歳以上で新規の腰痛(6ヶ月以上、腰痛の訴えが無かった)を主訴にプライマリケア医を受診した患者を保険システムから抽出し12ヶ月間経過観察した前向きコホート研究。

○初回のプライマリケア医の受診から6週間以内に画像診断を受けた患者[腰椎レントゲン検査=1174人, 腰椎CT/MRI検査=349人]を早期画像診断群に設定。

○対照群には、早期画像診断群に対してプロペンシティスコアマッチ法を用いて患者背景と臨床的特徴(診断名、痛みの重症度、痛みの罹病期間、身体機能(ADL)、これまでの医療保険の利用履歴)を揃えた患者1174人を抽出して設定した。

○痛みの強さ(11段階NRS)以外に、Roland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)、ADL、QOL等を初回受診から3,6,12ヶ月後に調査し、2群を比較した。

結果:
○早期画像診断群とコントロール群では、3,6,12ヶ月のいずれの評価時点でもRMDQ、ADL、QOLに有意差はなかった。

○腰痛の強さは、早期画像診断群とコントロール群では有意差が無かった。

○下肢痛の強さは、早期画像診断群の方が回復が早かった。

コメント

○65歳以上の高齢者に対する下肢痛を伴わない腰痛に対しては早期画像診断が臨床的outcomeに影響を与えないとする報告である。

○しかし、早期画像診断群およびコントロール群のいずれにもがんが発見された患者が約30人ずつおり、また、12ヶ月の経過観察期間にがんで死亡した患者(研究対象から除外)が4人いた。
画像診断の目的は、痛みの原因の診断だけでなく他の疾患(いわゆるred flag)の除外診断であることも考えると、大規模集団の12ヶ月後のQOLや痛みだけで早期画像診断を否定する根拠にはならないと判断できる。本研究から、「医療経済面から真に“無駄な”画像検査とは何か?」を考える機会にしなければならない。

ホームページ担当委員:住谷 昌彦