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2018-12-13

Topic No.177
非特異性腰痛:ファンクショナルタスク時のサブグループにおける脊柱の運動学の違い

Non-specific chronic low back pain: differences in spinal kinematics in subgroups during functional tasks.
Rebecca Hemming, et al. Eur Spine J. 2017; Epub ahead of print

要約

目的:
本研究の目的はファンクショナルタスク実行時の非特異性腰痛者と健常者における脊柱の運動学的な差異を理解することにある。本研究によって得られる知識は、分類に基づく認知行動療法における特異的な動作の再教育や、腰痛の自己管理を促通する新しいセンサーやバイオフィードバック法に役立つかもしれない。

対象/方法:
対象は50名の非特異性腰痛者と28名の健常ボランティアとした。2名の理学療法士が50名の非特異性腰痛群を痛みの訴えによって体幹前傾群27名と伸展群23名のサブグループに分けた。性別、年齢、身体計測上のデータおよび痛みの期間も聴取した。Visual Analogue Scale(VAS)、Oswestry Disability Questionnaire(ODQ)、Distress and Risk Assessment Method(DRAM)そしてTampa Scale of Kinesiophobia(TSK)を聴取した。計測には8台の赤外線カメラで構成される三次元動作分析装置用いた。C7~L4までの9か所を含む全身30か所に赤外線反射マーカーを貼付した。9つの標準的なファンクショナルタスク(上肢を上に伸ばす、座り、立ち上がり、段昇降、箱の持ち上げ、交換、元の位置に戻す、床に落ちたペンを拾う)を実施した。相互に連結するマーカーを用いて、下部腰椎(S1–L3)、 上部腰椎(L3–T12)、 下部胸椎 (T12–T6)そして上部胸椎(T6–C7)の角度を算出した。また、最大前屈と伸展の角度の和を2で割ることによって、可動域の中間角度を算出した。

結果/考察:

伸展群は、前傾群と比べて、よりDRAMの数値が有意に高かった。多くのタスクにおいて、下部胸椎および上部腰椎において伸展群と前傾群の間で有意差がみられた。前傾群と健常群との有意差は椅子からの立ち上がりと座り、床に落ちたペンをひろう動作において下部胸椎で認められ、前傾群で値が大きくなった。健常群と比較して屈曲群では胸腰椎部の屈曲角度が増加しており、先行研究と一致した。伸展パターン群では屈曲群と比べ、体幹を伸展位に保ちながらファンクショナルタスクを遂行していた。また健常群とくらべても伸展群では差が認められなかった。前傾姿勢要するファンクショナルタスクは伸展群にとっては困難なタスクではなかったことや、健常群との姿勢の判別が難しいこと、DRAMのスコアが高かったことなどから,伸展群ではより多面的な筋活動や心理社会的な要因によって腰痛が生じていることが考えられる。

コメント

前傾群は胸腰椎を可動させることでファンクショナルタスクを行っており、動作や姿勢の悪癖が非特性腰痛と関連していると考えられる。一方、伸展群では胸腰椎の動きは健常者とは変わらないにも関わらず腰痛を訴えており、動作や姿勢を改善したとしても腰痛の訴えを減らことができず、心理社会的な面からのアプローチも必要になることが示唆されている。痛みが出現する方向によって認知行動療法からの観点から与える指導方法が変わってくることも考えられるので、治療者にとって有益な情報をもたらす論文であった。

ホームページ担当委員:勝平 純司