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2018-11-29

Topic No.34
TKA予定患者の疼痛破局的思考は不変的な特性か動的な状態か?

Is Pain Catastrophizing a Stable Trait or Dynamic State in Patients Scheduled for Knee Arthroplasty?
Wade JB, et al. Clin J Pain. 2012 Feb;28(2):122-8.

 

要約

TKA(Total Knee Arthroplasty)予定患者の疼痛破局的思考と術後経過の関係を検討した前向きコホート研究。

方法:
TKA予定患者319名を対象に術前評価を行い、その内の182名が縦断研究に参加した。参加者は術前と術後2、6ヵ月目に疼痛強度(Visual Analog Scale:VAS)、疼痛破局化強度(Pain Catastrophizing Scale:PCS)、不安感(Generalized Anxiety Disorder module of the Primary Care Evaluation of Mental Disorders:PRIME-MD anxiety score)、抑うつ(PRIME-MD / Patient Health Questionnaire-8:PHQ-8)を測定し、線形混合モデルを用いてこれらの測定項目が後のPCSと関連しているか、その変数との適合性が調査された。

結果:
6ヶ月間の追跡調査において、すべての調査項目を完遂したのは150名でり、VASとPCSの平均値は、術後経過に伴って低下した(上図)。
術前と術後2、6ヵ月後のVASとPCSは有意な相関関係を示した(r = 0.398, P < 0.001; r = 0.414, P < 0.001; r = 0.541, P < 0.0001)。また、術前から術後6ヵ月のVASとPCSの変化率には有意な相関関係を認めた(r = -0.22, P < 0.01)。その他にも、PCSとPRIME-MD anxiety score、PHQ-8は、各期間で明らかに有意な関係を認めた。さらにVASとPCSは、その後のPCSを予測する変数であった(上表 各Modelの”Pain at previous time point”と”Catastrophizing at previous time point”を参照)。

コメント

本研究結果より、TKA患者の疼痛破局的思考は、術後経過に伴う疼痛強度や不安感、抑うつなどの変化によって動的に変化することが明らかとなった。 時間経過に伴う疼痛破局的思考の減少は、術後の疼痛や不安感、抑うつの改善を反映する可能性があり、術前・術後の疼痛強度やPCSは、その後の疼痛破局的思考を予測する要因であることが示唆される。

ホームページ担当委員:坂野 裕洋