Topic No.75オピオイド鎮痛薬は腰椎椎間板ヘルニアのアウトカムに影響があるか?
Does Opioid Pain Medication Use Affect the Outcome of Patients With Lumbar Disc Herniation?
Radcliff K et al. Spine. 2013 Jun 15;38(14):E849-60
要約
Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)のデーターベースを用いた多施設前向きコホート研究で、腰椎椎間板ヘルニアによる疼痛に対しオピオイド使用群と未使用群に分けて治療効果を検討した。
方法:
オピオイド群:520人、非オピオイド群:542人が対象で、4年間の観察期間において、SF-36, The Oswestry Disability Index, Sciatica ersomeness Index, Low Back Pain Both ersomeness Scaleにて治療効果を判定。また4年間で手術に至ったかどうかオピオイド群と非オピオイド群とで差があったかどうか検討した。
結果:
オピオイド群でも非オピオイド群でも4年後のファローアップでは有意な差は無かった。オピオイド群の方が非オピオイド群に比べ、当初、疼痛、神経脱落症状が強く、またQOLも低下していた。
最終的に手術をうける率も非オピオイド群より若干多かった。4年後の調査では手術における治療効果という面ではオピオイド群も非オピオイド群にも差は無かった。また最終的にオピオイド群は16%が継続内服しており非オピオイド群は5%が内服していた。
コメント
著者らはオピオイドによる一時的な疼痛緩和がオピオイドを過量使用する事になったり乱用されることに繋がらないか、今後の研究が必要と言っている。またオピオイド長期投与の安全性が決して確立されているわけではない。 最近、強オピオイドを10年以上使用するとホルモンや炎症マーカーの異常値が起こったという報告もある。日本でも非癌性疼痛に対し様々なオピオイドが以前に増して使いやすくなったわけではあるが、きちんと病態を見極めて処方することが望まれる。また非癌性疼痛におけるオピオイド長期投与の安全性は日本人での報告は殆ど無く、今後の重要な課題のひとつと思われる。この論文でもオピオイドを使用する場合は疼痛が強くQOL 障害もあるわけだが4年経っていても腰椎椎間板ヘルニアの痛みが続いてオピオイド内服が継続されているのが16%あった。平均年齢が41.8歳と言う事を考えるとオピオイド長期使用における安全性等、更なる調査が必要と思われる。
ホームページ担当委員:今村 寿宏