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2018-12-10

Topic No.146
カフ圧痛計を用いた運動器疼痛の痛覚感受性と時間的加重:信頼性研究

Assessment of musculoskeletal pain sensitivity and temporal summation by cuff pressure algometry: a reliability study
Graven-Nielsen T. et al. Pain. 2015 Nov;156(11):2193-202.

要約

背景/目的:
慢性の運動器疼痛は中枢性感作と関係し,標準化された評価方法が必要である。本研究では(1)手動圧痛計とコンピューター制御されたカフ圧痛計の試験-再試験信頼性(圧痛閾値と時間的疼痛加重),(2)カフ圧痛計のconditioned pain modulation(CPM)に対する感度について,身体部位,年齢,性による影響を含め調べた。

方法:
健常者136名に対し,上肢(利き手側の上腕二頭筋筋腹中央)と下肢(利き手側の大腿四頭筋(大腿直筋)筋腹中央で膝蓋骨底の20cm近位)にて,手動圧痛計で圧痛閾値を測定するとともに,カフ圧痛計を用いてカフ圧痛閾値(cPPT),カフ圧痛耐性値(cPTT)およびcPTT強度で10回繰り返しカフ加圧刺激をした時のVASとして時間的疼痛加重(TSP)をそれぞれ別日に測定した。また,CPMは1~2℃の冷水に利き手側の手部を2分間浸漬する冷刺激前後のcPPT,cPTT,TSPで評価した。

結果:
手動圧痛計とカフ圧痛計ともにかなり~高い信頼性(ICC: 0.60~0.90)が示され,下肢のcPPT,cPTT,TSPと上肢のcPTT,TSPで検者間の系統的バイアスは認められなかった。
cPPTとcPTTは女性に比べ男性で有意に高く,また,若年層(M: 24.2, F: 24.6歳)に比べ中年層(M: 53.0, F: 53.9歳)では圧痛閾値は高いがcPPTとcPTTは低かった。
TSPは男性に比べ女性で有意に増大した。カフ圧痛計は,cPPTやcPTTの増加およびTSPの減衰を示し,CPMの評価として感度は高かった。

考察:
疼痛評価のためのコンピューター制御されたカフ圧痛計の信頼性と感度は手動圧痛計に相当し,検者間で差のない疼痛評価方法である。手動圧痛計とカフ圧痛計の年齢による痛覚感受性の違いについてはさらなる検討が必要である。

コメント

運動器疼痛の理学的評価としてこれまで使用されてきた圧痛閾値だけでなく,慢性の運動器疼痛に関係する中枢性感作の評価として時間的加重やconditioned pain modulationを用い信頼性の確認された定量評価を行っていくために重要な評価方法が提示されている。

ホームページ担当委員:松原 貴子