Topic No.144

カンナビノイドの医療的使用（システマティックレビューとメタアナリシス）

Cannabinoids for Medical Use　A Systematic Review and Meta-analysis
Whiting PF et al. JAMA. 2015 Jun 23-30;313(24):2456-73

要約

背景／目的：
カンナビス（大麻）とカンナビノイド（大麻の生理活性物質）は疾患の治療や症状改善に広く用いられている。この研究は、様々な疾患に対して、医療用カンナビノイドの利点と欠点についてエビデンスを示すことを目的として行われた。

方法：
研究デザイン：対象とする疾患や症状は、慢性痛のほか、化学療法による嘔気嘔吐、HIVにおける食欲増進、痙縮、鬱、不安障害、睡眠障害、精神病、緑内障、トゥレット障害、とした。RCTが行われている研究を抽出した。

データ抽出と統合：Cochrane risk of bias toolを用いて研究の質を評価した。すべての評価は別々に二人で行われた。論文から、患者背景と各種アウトカム（患者に関連したアウトカム、疾患特異アウトカム、ADL、QOL、全体的な印象、副作用）に関するデータを抽出した。

結果：
79の研究（6462人の参加者）が含まれた。ほとんどの研究ではカンナビノイドにより症状の改善が見られたが、すべての個々の研究で統計学的な有意差はなかった。
メタ解析では、プラセボと比較して、カンナビノイドは嘔気嘔吐を起こす患者を減らした（47% vs 20%; odds ratio [OR], 3.82 [95% CI, 1.55-9.42]; 3 trials）。また痛みの強さが30％以上改善したものを有意とした場合、カンナビノイド群の方で痛みが改善した人数が（37% vs 31%; OR, 1.41 [95% CI, 0.99-2.00]; 8 trials）多かった。
NRSの改善率はカンナビノイド群の方が有意に多かった（on a 0-10-point scale; weighted mean difference [WMD], −0.46 [95% CI, −0.80 to −0.11]; 6 trials）。
痙縮に関してはAshworth spasticity scaleの改善率がカンナビノイド群で有意に多かった（WMD, −0.12 [95% CI, −0.24 to 0.01]; 5 trials）。
副作用は、カンナビノイド群で、めまい、口渇、吐き気、倦怠感、傾眠、多幸感、嘔吐、方向感覚喪失、眠気、錯乱、バランス感覚喪失、幻覚などがある。

結語：
慢性痛と痙縮に関してカンナビノイドの使用は中等度の質のエビデンスをもって支持される。化学療法の嘔気嘔吐、HIV感染後の体重減少、睡眠障害、トゥレット障害に関しては低い質のエビデンスがある。カンナビノイドは。短期的な副作用を増加させる。

コメント

大麻が合法化される国が増えている。アメリカでは23の州と、ワシントンDCで、医療使用が認められている。
痛みに関しては、中等度の質のエビデンスがあるとされている。しかし、研究に使用されている薬物や対象疾患が様々である。また、ほとんどの個々の研究では統計学的有意差がなかった。メタ解析をしてOR 1.41 95% CI, 0.99-2.00という結果であるが、明らかに有意とは言えないのではないか。QOLの評価項目であるEQ-5Dでは有意差がない点も気になる。慢性の痛みに対してカンナビノイドを用いるかどうかについては、この研究だけでなく、副作用の点も含めて更なる研究が必要だろう。

ホームページ担当委員：西江 宏行