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2018-12-07

Topic No.130
スタチン製剤に関連した筋障害のシステマティックレビュー

A systematic review of statin-induced muscle problems in clinical trials
Ganga HV. et al. Am Heart J. 2014 Jul;168(1):6-15

 

要約

背景/目的:
スタチン製剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、血液中のコレステロール値を低下させる薬物の総称であり、高脂血症の患者における心筋梗塞や脳血管障害のリスクを軽減させる働きから、日本でも広く普及している薬剤の一つである。
ただし近年、スタチン製剤の副作用に関する報告がでてきており、特にスタチン内服に伴いある一定の割合(10-15%)で筋肉への障害が生じることが報告されている。なかでも横紋筋融解症は重大な副作用の一つとして知られ、スタチンと筋障害との関係が注目されている。一方で、明らかな横紋筋融解の兆候(CK上昇)がないにも関わらず、スタチンが筋痛を誘発するのではないかという報告も散見されることから、今回著者らは、スタチンと筋障害との関係についてReviewを行った。

方法:
医療系論文サイトサーチエンジンより収集したスタチンに関する1012の報告の中から、質の高い42ランダム化比較試験の報告を抽出した。
これらの報告の中から、スタチン治療群とプラセボ治療群の筋痛の頻度、CK上昇の程度をχ2乗検定にて比較した。

結果:
○筋痛の生じた頻度は、スタチン治療群:12.7%(7544/59237)、プラセボ群:12.4%(6735/54458)であり、統計学的比較ではP=0.06となり有意差はないものの、差の傾向のみ認められた。

○7つの研究でCK上昇(基準値の3倍以上)について言及しており、その頻度はスタチン治療群:0.5%(63/13734)、プラセボ群:0.3%(42/13740)であり、両群間にわずかながら統計学的有意差が認められた(P=0.04)。

○いくつかの研究で横紋筋融解症について言及されていたが、そのうち2つの研究で横紋筋融解症の診断がなされており、その頻度はスタチン治療群:0.03%(15/49691)、プラセボ群:0.02%(12/52301)であり、両群間に統計学的有意差はみられなかった(P=0.48)。

コメント

今回、調査対象となった報告すべてにおいて、同じようにCKの検査が行われていないことも限界点であると考えられるが、調査されているものを見る限りでは、スタチン治療群の方が、わずかながらもCK上昇を生じやすいということはいえるであろう。一方、このわずかなCK上昇が筋痛にどの程度関与しているかが問題点でもある。

ホームページ担当委員:池本 竜則