Topic No.23ラット神経障害性疼痛モデルに対する定期的な運動は感覚の過敏性を改善させる
Regular exercise reverses sensory hypersensitivity in a rat neuropathic pain model: role of endogenous opioids.
Stagg NJ, et al. Anesthesiology 2011 Apr, 114(4): 940-948.
要約
規則的な有酸素運動は内因性オピオイドを介して疼痛調節システムに働きかけ神経障害性疼痛の症状を改善させるという仮説を、ラット脊髄神経結紮(SNL)モデルを用いて検証した研究。
方法/結果:
SDラットのL5・L6脊髄神経を結紮し、脊髄神経結紮(SNL)モデルを作成した。SNLモデルの痛覚閾値は低下し、症状は5週後まで持続した。
これに対してトレッドミル走行(分速14-16m,週5回,5%勾配,30分,5週間)による運動を行ったところ、運動開始3週後から痛覚閾値の上昇が認められ、5週後には正常レベルまで回復した。
運動の条件を変えて検討したところ、週5回、週3回のいずれの頻度でも同等の痛覚閾値の回復が認められたが、運動の強度に関しては回復が認められたのは高強度(トレッドミル分速16m)のみであり、低強度(トレッドミル分速10m)では痛覚閾値の回復は認められなかった。またモデル作成から1週後、3週後から運動を開始したいずれの場合でも痛覚閾値の回復が認められた。
運動期間終了後の痛覚閾値の推移を見ると、5日後から再び低下し始め、8日後には運動開始前と同じ状態まで戻った。一方、ナロキソン(オピオイド受容体拮抗剤)を投与すると運動による効果は消失した。
免疫組織化学的手法を用いて中脳水道周囲灰白質、吻側延髄腹側部を解析したところ、運動を行ったSNLモデルでにおいてβエンドルフィンおよびメトエンケファリン含有量の増加が認められた。
コメント
慢性痛(神経障害性疼痛)に対する運動効果のメカニズムを解明した報告であり、運動により脳内に誘導される内因性オピオイドが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 また運動の頻度、強度、開始時期の影響についても検討されており、実際の運動による治療を考えていく上で大変参考になる。
ホームページ担当委員:中野 治郎