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2018-11-30

Topic No.61
交通事故での外傷性頚部症候群に理学療法を行った場合の回復の予後不良因子

Prognosis of patients with whiplash-associated disorders consulting physiotherapy: development of a predictive model for recovery.
Bohman et al. BMC Musculoskeletal Disorders 2012, 13:264.

要約

西洋社会では少なくとも年間10万人に300人の交通事故による頚椎捻挫症例が発生する。このことで生じるコストはアメリカで39億ドル、ヨーロッパで13.4億ドルとされている。本研究では、いわゆる交通事故での頚椎捻挫、外傷性頚部症候群に理学療法を行った場合の回復の予後不良因子について調査した。

方法:
カナダのサスカチュワン州の政府の健康保険のデータベースの1997年12月1日から1999年11月30日までの交通事故での頚椎捻挫、外傷性頚部症候群のうち18歳以上で、サスカチュワン州の住民で、労災事故でないこと、英語が喋れるもの、事故と関連ない重病が無いことを満たした8634症例を調査対象とした。頚部や肩部に痛みが無いものは1110例であった。理学療法士にコンサルトが有ったもののうち、2日以上入院した82例などを除いた680例を精査した。事故から6週間後、3ヶ月後、6ヶ月後に調査を行った。平均年齢39歳、女性が69.3%。頚部痛の強さは6.8/10。腰痛は54.9%、頭痛は82.6%に見られた。66.7%の患者はいずれ症状が軽快すると信じていたが、1.2%は全く改善しないと信じていた。

結果:
事故からの回復を図に示す。平均回復期間は97日。初期に回復する症例が多いが、その後は回復が遅れる症例が多い。事故後250日で殆どの症例が治癒している。
予後不良因子としては、受傷時の頚部痛が中等度/高度なもの,受傷時の腰痛が高度なもの,頚部と腰痛以外の部分の痛みがあったもの,事故の前に筋骨格系の問題があったもの,事故前の頭痛,回復への期待が無いもの,治らないと思っているものであった。

コメント

日本とカナダは国民皆保険という点で似た医療制度を持つが、医師の受診回数が1回44.1%、2回が33.7%(平均1.9回)、理学療法士が1回が34.8%、2回が28.8%(平均2.6回)と日本と比較すると圧倒的に受診頻度が少ない。 カナダでは外傷性頚部症候群の定義は頚椎の脱臼や骨折、脊髄損傷まで含み、日本より重症と考えられるが日本より明らかに治療行為が少ない。

ホームページ担当委員:三木 健司