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2019-03-13

Topic No.189
人工膝関節置換術後の遷延性疼痛と術前におけるX線重症度、感覚検査、痛みの時間的加重との関連性

The Role of Preoperative Radiologic Severity, Sensory Testing, and Temporal Summation on Chronic Postoperative Pain Following Total Knee Arthroplasty.

Petersen KK, et al. Clin J Pain. 2018 34(3):193-197.

要約

背景:

変形性膝関節症(膝OA)の痛みには中枢感作が関連しているとされており,その状態を反映する指標の一つに痛みの時間的加重(Temporal Summation of Pain; TSP)がある。先行研究では人工膝関節全置換術前にカフ圧痛計を用いたTSPが亢進している症例では術後遷延性疼痛の発生率が高いことが示唆されている。また、膝OA患者では,熱痛覚閾値が低下していることも示唆されている。そこで、本研究では,TKA前におけるX線重症度および痛みの定量的感覚検査(熱痛覚閾値、機械刺激に対するTSP)の値がTKA12ヶ月後における痛みの残存を予測する因子になり得るか比較・検討した。

方法:

対象はTKAを予定している200例で、術前にKellgren & Lawrence(KL)スコア、基本属性、痛みの強度(VAS)、冷覚閾値、温覚閾値、冷痛覚閾値、熱痛覚閾値、von Frey stimulatorによるTSPについて評価された。そして、TKA実施12ヶ月後にVASが評価された。対象者は術前の痛み(VAS値)が30%以上改善した通常群と30%未満しか改善しなかった残存群に振り分け、解析された。

結果:

解析対象から除外された70名を除く130名が対象となり,そのうち25名(19%)が残存群であった。基本属性および冷覚閾値、温覚閾値、冷痛覚閾値、熱痛覚閾値について,両群間に有意差は認められなかった。一方、von Frey stimulatorによるTSPについては,残存群は通常群と比べて有意に亢進していた。術前の評価値とTKA12ヶ月後のVAS値の相関については、von Frey stimulatorによるTSP、KLスコア、熱痛覚閾値が有意な正の相関を示し、温覚閾値は有意な負の相関を示した。また、単回帰分析の結果、von Frey stimulatorによるTSPのみがTKA実施12ヶ月後における術後遷延性疼痛の予測因子となることが示された.

考察:

先行研究によれば、術前の広範に認められる痛覚過敏やconditioned pain modulation (CPM) の変調などが術後遷延性疼痛の発生と関連があることが報告されている。今回の結果、von Frey stimulatorによるTSPのみがTKA実施12ヶ月後における術後遷延性疼痛の予測できる可能性が示唆され、術前における中枢疼痛修飾系の評価の重要性を示唆するエビデンスがさらに蓄積されたといえる。

コメント

von Frey stimulatorによるTSP がTKA後の術後遷延性疼痛を予測する指標になり得ることが示され,TKA前後における痛みの評価では定量的感覚検査を実施することが必要といえる。ただ、先行研究では術後急性期や回復期における痛みや機能障害との関連性などについては検討されておらず、今後は検証する必要があると思われる。

ホームページ担当委員:坂本淳哉