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2018-11-29

Topic No.46
単神経障害モデルラットにおける情動および認知障害の研究:デュロキセチンとガバペンチンの効果

Study of emotional and cognitive impairments in mononeuropathic rats: effect of duloxetine and gabapentin.
Gregoire S et al. Pain 153(8) 1657-63. 2012.

要約

背景/目的:
神経障害性疼痛モデルラットにおいて、不安や抑うつ様の行動と認知機能が障害されているかどうか、またデュロキセチンとガパペンチンがそれらに対してどのような効果を発揮するかを調べた研究である。

方法:
SDラットの右坐骨神経に対して、絞扼性に神経を傷害しCCI(Chronic Constriction Injury)モデルを作成した。このモデルにおいて、痛みと認知、情動がどのように変化するかを複数の行動実験を用いて評価した。具体的には痛みの評価として、 ①機械刺激過敏性、認知機能評価として②空間認知記憶テスト(Y字迷路)、③社会認知記憶テスト(初めて遭遇した個体であるかを記憶するテスト)、不安・抑うつ様行動評価として④オープンフィールドテスト(壁のあるところと中央部分のどちらで行動するかのパターン評価)、⑤高架式十字迷路(高所に対する不安の評価)、⑥社会相互作用テスト、⑦サッカリンプレファレンステスト(甘いものの消費量で無快感の程度を評価)を行った。
またそれらに対し、抗うつ薬SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)であるデュロキセチン、抗てんかん薬であるガバペンチンを経口投与した場合、どのような効果が得られるかについても検討した。

結果/考察:
CCIによりvon Freyテストで機械刺激による過敏性が観察され、この過敏性はデュロキセチン(3-30mg/kg)、ガバペンチン(10-30mg/kg)によって用量依存性に改善した。
認知機能はCCIによって空間認知記憶では障害されず、社会認知記憶が障害されていた。またこの社会認知記憶障害もデュロキセチン、ガバペンチンにより改善した。
不安行動はCCIによってオープンフィールドによる評価では増加したが、高架式十字迷路や社会相互作用テストでは増加が検出されなかった。またオープンフィールドテストでは移所行動の減少も同時に観察された。更にデュロキセチンとガバペンチンは不安様行動パターンや移所行動減少を回復させた。
また抑うつ様行動の指標であるサッカリンプレファレンステストによる快感の消失はCCIによって影響されなかった。
これらのデータからCCIにより感情面の障害よりも認知機能障害が目立ち、この障害がデュロキセチンやガバペンチンによって改善することが分かった。

コメント

神経障害性疼痛は気分障害や不安障害、また認知機能にも影響することは知られてきたが、本実験は動物モデルを用いて網羅的に行動の評価をする必要性を示した研究である。特に社会認知記憶の障害は臨床的にもこれから検討すべき課題であり、社会生活機能からみた予後という視点から痛みを評価することは重要であると思われる。

ホームページ担当委員:西原 真理