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2018-12-06

Topic No.98
学際的手の外科センターでの29年間の虚偽性障害の症例

Factitious Hand Disorders: Review of 29 Years of Multidisciplinary Care.
O’Connor EA. et al. J Hand Surg Am. 2013 Aug;38(8):1590-8

 

要約

背景/目的:
手の外科領域の代表的な虚偽性障害は、「傷をつける」「腫脹」「精神的なCRPS」「ジストニア」に分類される。虚偽性障害を見分けるこつは、
○ 身体所見としては「手の届く場所」「利き手の反対側」「連続する傷」「全周性」「培養でも無菌性」「多種の症状」「通常ではない経過」「多数回の手術、処置」「多数回の医療」、
○ 患者要因としては「予後を知っていること」「退院時やストレス時に症状が悪くなる」「保存療法の拒否」「曖昧な病歴」「前医からの情報提供拒否」「コンプライアンスが悪い」「医学知識が過剰」、
○ 心理的要因としては「最近のストレス」「他種類の心気症的愁訴」「精神疾患」「二次的利得の履歴」「小児期の疾病」「症状が変化する」「虚偽性障害の家族歴」が挙げられている。
今回、1981年から2010年までの学際的手の外科センター(手の外科医、作業療法士、精神科医)での労働災害症例の中での虚偽性障害174症例について検討した。

結果:
174症例の内訳は、「傷をつける」9%、「腫脹」29%、「精神的なCRPS」16%、「ジストニア」47%であった。
各病態の特徴は、
○「傷をつける」では、より高い教育レベル、医療サービスを良く利用している、MMPIテストでは怒りや敵意を示す、復職率は低い、であった。
○「腫脹」ではより検査を受けている、MMPIテストでは怒りや敵意を示す、であった。
○「精神的なCRPS」では、男性が多い、より低い教育レベル、詐病、身体表現性疼痛障害、復職率は高い、であった。
○「ジストニア」では、より低い教育レベル、医療サービスを受けていない、MMPIテストで転換性障害、心気症的、うつ的、復職率は高い、であった。

虚偽性障害の診断までには手術も行われており、「腫脹」では手根管開放術、デケルバン手術。「精神的なCRPS」では、腱板修復術、肘部管開放術、手根管開放術、が多い傾向にあった。
治療としては、「傷をつける」は創部閉鎖とギプス、「腫脹」はギプス、「ジストニア」は催眠療法、「精神的なCRPS」はバイオフィードバックが行われていた。診断までの治療費は、「傷をつける」39,130ドル、「腫脹」57,420ドル、「精神的なCRPS」25,330ドル「ジストニア」35,180ドルと高額である。治療費は6,390ドルから9,220ドルであった。

コメント

外科医にとって、患者の精神的な背景まで考慮し、治療することは困難であるが、精神科医と共に治療体系を構成し、虚偽性障害を見分ける必要がある。

ホームページ担当委員:三木 健司