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2018-12-11

Topic No.152
帯状疱疹後神経痛のリスクファクターに関する系統的レビューとメタ解析

A systematic review and meta-analysis of risk factors for postherpetic neuralgia.
Forbes HJ, et al.

 

要約

背景:
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、水痘-帯状疱疹ウイルスによる、帯状疱疹の皮疹の治癒後も続く痛みのことである。痛みは数か月から数年にわたり続き、QOLを低下させる。50歳以上で帯状疱疹に罹患した患者の12.5%はPHNに移行する。年齢とともにPHNの割合は増加することが知られている。年齢の他には、急性期の痛みと皮疹の強さがPHNの割合に影響すると考えられている。しかし、系統的レビューはまだ存在しない。PHNへ移行するリスクファクターを知ることは、ワクチン接種の適応を考える上での情報として重要である。

方法:
1950年から2014年2月3日までのMEDLINEとEmbaseで論文を調査した。

結果:
3614の論文中、最終的に19論文を解析した。

臨床症状    ・・・・・・・・・・・・・  PHNへ移行するリスク(rate ratio)

皮疹が出現する前に痛みがある ・・・・・・・ 2.29(CI: 1.42-3.69)

急性期の痛みが強い場合(neuropathic pain ・・・ 2.23(CI: 1.72-2.92)
Questionnaireで5以上、NRSで4以上)

アロディニア    ・・・・・・・・・・・・ 論文により異なる

痛みが生活機能を障害している ・・・・・・・ 2.10(CI: 1.27-3.48)

強い皮疹      ・・・・・・・・・・・・ 2.63(CI: 1.89-3.66)

目にかかる帯状疱疹    ・・・・・・・・・ 2.51(CI: 1.29-4.86)

皮疹が出現してから受診するまでの日数 ・・・ 0.93(CI: 0.86-0.99)

年齢    ・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.22~3.11 10歳ごとに

性別    ・・・・・・・・・・・・・・・・ 論文により異なる

重症免疫抑制では3/5の論文で、糖尿病では1/4の論文でPHNになりやすいと報告。

喫煙がPHNのリスク因子であるという論文が1つあり。

考察:
皮疹出現前の痛み、強い急性痛、目にかかる帯状疱疹はPHNの強いリスク因子であった。皮疹が出現してから受診するまでの日数が長い方が、PHNのリスクが少なかった。ワクチン接種の適応判断に有用な情報としては、年齢が強いPHNのリスク因子であった。免疫抑制、糖尿病はいくつかの論文でPHNのリスク因子であった。SLE、外傷、パーソナリティ障害は1つの論文だけでPHNのリスクであると報告があった。鬱やがんがPHNのリスク因子であるという論文はなかった。
強い皮疹や強い痛みは、強い神経障害を示唆し、PHNを引き起こす理由である。皮疹が出現してから受診までの日数が長い方がPHNのリスクは少ない。おそらく症状の強い症例では早く受診するためであろう。眼に及ぶ帯状疱疹がPHNへ移行しやすい機序は不明である。年齢は、細胞性免疫の低下によりPHNのリスク因子となる。
帯状疱疹ワクチンはPHNの予防になるが高価である。したがって、ターゲットを絞って接種するのが望ましい。現在は、高齢者のみが適応で、免疫抑制患者には禁忌である。免疫抑制患者はPHNのリスク因子になり得るので、PHNを予防する新たな戦略が必要である。

結論:
皮疹出現前の痛み、強い痛み、強い皮疹、眼にかかる帯状疱疹がPHNのリスク因子である。免疫抑制、SLE、糖尿病、外傷もPHNのリスク因子の可能性がある。年齢は強いPHNのリスク因子でありワクチン接種の根拠となる。

コメント

帯状疱疹は、発症時の重症度が神経障害の程度と相関している。つまり現状では帯状疱疹を発症した時点でPHNに移行するかどうかが、ほぼ決まっているのではないかと考える。ワクチンのPHN予防効果が期待されており、日本でも効果と副作用の検証が望まれる。

ホームページ担当委員:西江 宏行