toggle
肩の痛み、膝の痛み、腰痛、神経痛など、慢性の痛みに関する総合情報サイト
2018-12-06

Topic No.95
患者の性別、人種、抑うつ状態の有無が医療者の疼痛治療方針決定に及ぼす影響

The influence of patient’s sex, race and depression on clinician pain treatment decisions.
Hirsh AT, et al. Eur J Pain. 2013 Nov;17(10):1569-79

 

要約

背景/目的:
医療者による治療方針決定は医療者自身および患者のデモクラフィック属性や精神心理状態に左右されることが多い。本研究では慢性疼痛患者の性別、人種および抑うつ状態および医療者の特徴がその後の治療方針に及ぼす影響を調査した。

方法:
● 対象者 医療者 100名
熟練者:医師7名、看護士12名、ナースプラクティショナー2名
訓練生:研修医40名、医学生36名、看護大学院生1名、医療系研究者2名
● コンピュータシュミレートされた架空の患者 16名
「男or女」、「黒人or白人」、「抑うつ傾向の有or無」の3項目の組み合わせから8通りの慢性疼痛患者を其々2名、計16名作成する。
● 測定
1.対象者の特徴に関する質問
デモグラフィック属性、専門分野、慢性疼痛治療の経験度(VAS 0-100)
2.コンピュータにて患者の確認、治療方針の決定
対象者がコンピュータにて患者の映像とプロファイルを確認し、治療方針を以下の項目から決定する。また、それぞれの治療の適応度を0-100で評価する。
(1)オピオイド処方
(2)抗うつ薬処方
(3)疼痛専門医への紹介
(4)心理カウンセリングへの紹介

結果:
各治療方針を選択された患者の特徴(idiographic(individual-level)およびnomothetic(grouplevel)解析):
● オピオイド処方:性別、人種による影響はほとんどなかったが、抑うつ状態のある患者ではない患者より有意に高くオピオイド処方が適応とされた。
● 抗うつ薬処方:男性より女性の患者で、抑うつ状態のない患者よりある患者で、有意に高く抗うつ薬処方が適応とされた。人種による影響はなかった。
● 疼痛専門医への紹介:性別、人種による影響はほとんどなかったが、抑うつ状態のある患者ではない患者より有意に高く疼痛専門医への紹介が適応とされた。
● 心理カウンセリングへの紹介:男性より女性の患者で、抑うつ状態のない患者よりある患者で、有意に高く理カウンセリングへの紹介が適応とされた。人種による影響はなかった。
対象者の特徴による差異:
● 疼痛治療経験度が低い対象者では高い対象者より、疼痛治療方針決定の際に有意に人種の影響を受けやすかった。

考察:
I. 全ての治療方針に関して最も影響力の高かった患者の特徴は、抑うつ状態の有無であった。
II. しかしながら、疼痛治療経験度の低い対象者については、人種の影響を受けやすいことがわかった。

コメント

日常の疼痛治療において、医療者は医療者自身や患者の特徴によって、その治療方針決定が左右されている。本研究では多くの因子についての解析は実施できていないが、このような解析を行うことは、臨床上で起こりうる治療方針の偏りを是正し、疼痛治療をより発展させることに繋がると考える。

ホームページ担当委員:宮崎 温子