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2018-12-04

Topic No.87
慢性疼痛3群;慢性腰痛(CLBP)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、変形性膝関節症(knee OA)の脳の形態学的変化の比較法

Brain Morphological Signatures for Chronic Pain.
Baliki MN,et al. PLoS ONE 6 : e26010, 2011

 

要約

背景/目的:
慢性腰痛(CLBP)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、変形性膝関節症(knee OA)による3群の慢性疼痛患者群で、voxel-based morphometry(VBM)法を用いて、それぞれの慢性の痛みが、どのように灰白質密度の変化に影響するかについて検討した。。

方法:
慢性疼痛患者84例、CLBP 患者36例、CRPS 患者28例、および knee OA 患者20例について、3T MRIを使用したVBM法を用いて、年齢および性別をマッチさせた健常対照群46例と比較し、灰白質密度の低下している部位を調べた。軽度ないし中等度を超えるうつ状態の患者は除外した。

結果:
全灰白質密度は、CLBP群でのみ低下していたが 、CRPS群、OA群では低下していなかった。CLBP群とOA群では、帯状回、S1、S2体性感覚野で、同程度の灰白質密度の低下を示した。CRPS患者での灰白質密度の低下は、前部島皮質と眼窩前頭皮質の一部に限局していた。それぞれの慢性疼痛状態に固有の灰白質密度の低下パターンが認められ、3群の中ではCLBP群が、最も灰白質密度の変化が認められた。
慢性疼痛患者3群とも、帯状回、島、海馬、複数の外側前頭領域、および後頭葉の一部の灰白質密度の低下は、共通する変化であった。
長期慢性疼痛群では、体性感覚野、島、運動野で、短期罹患群と比較して、灰白質密度が有意に低下していた。島の灰白質密度の低下は、痛みが5年以上持続した慢性疼痛患者で、慢性疼痛罹患期間と有意な相関関係が認められた。

コメント

慢性疼痛は、局所脳神経機能の変化だけでなく、局所的脳の形態的構造を変化させ、灰白質密度を低下させる。海馬は痛みの不快情動処理に関与しており、海馬の灰白質密度の低下は、慢性疼痛の発症に中軸的な役割を果たしていると考えられる。眼窩前頭皮質は痛みの抑制系に関与することが示唆されており、正常に機能しないことが、CRPSの発症に重要な役割を果たしていると考えられる。 VBM法を用いた慢性疼痛に伴う局所的な灰白質密度の低下に関する調査では、CLBP群が3群の中で一番大きいという知見は、我々が行ってきた知見と一致した。疾患ばかりでなく、慢性疼痛に伴う抑うつ、不安、破局化思考などの心理的パラメーターとVBMによる局所脳領域の灰白質密度の変化との関連もわかれば、慢性疼痛の評価法としてのVBMの臨床的意義がクリアになってくると考えられる。

ホームページ担当委員:福井 聖