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2018-12-10

Topic No.141
慢性痛患者の認知機能は中枢性感作やQOLと相関する

Cognitive Performance Is Related to Central Sensitization and Health-related Quality of Life in Patients with Chronic Whiplash-Associated Disorders and Fibromyalgia.
Coppieters I,et al. Pain Physician. 2015 May-Jun;18(3):E389-401.

要約

背景/目的:
慢性むち打ち損傷(cWAD)や線維筋痛症(FM)における中枢性疼痛調節系や中枢性感作の変調は痛みの発生・持続に関与すると考えられている。また,このような慢性痛患者では認知機能の低下を認めることがある。さらに,cWADやFMでは健康関連QOL(QOL)の低下が報告されている。しかし,これらの関係は明らかでない。そこで本研究では①cWADとFM,健常者(CON)の認知機能,中枢性感作,QOLを比較し,②認知機能と中枢性感作,QOLの関係性を調べた。

対象/方法:
対象は,cWAD 16名,FM 21名,CON 22名とした。測定項目は,中枢性感作の指標には圧痛閾値,深部組織の痛覚感受性(Cuff圧迫による疼痛閾値),時間的荷重(TS)およびconditioning pain modulation(CPM),またQOLの指標にはSF-36を用いた。認知課題はStroop Task,Psychomotor Vigilance Task,Operation Span Taskとした。

結果:
①cWADとFMはCONに比べ認知機能低下,TSの増大,QOLが低下し,FMはその傾向がより顕著であった。CPMは3群で差がなかった。

②認知機能と中枢性感作の関係は,cWADは深部組織の痛覚感受性と,FMは中枢性感作の全ての指標と,健常者は深部組織の痛覚感受性およびCPMと相関を示した。また,cWADとCONは認知機能とQOLの低下に正の相関,FMは負の相関を示した。

まとめ:
臨床においてcWADやFMでの認知機能低下や,FMでの認知機能低下と中枢性感作の関係性は客観的評価指標として重要である可能性が示唆された。認知機能とQOLの関係はcWADとFMで異なると考えられるが更なる検討が必要である。

コメント

認知機能低下と中枢性感作や健康関連QOLの関係は慢性痛患者に特異的なものではなく健常者でも認めたことは非常に興味深い。このことから認知機能低下は痛みの慢性化の予測因子となりうる可能性も考えられるのではないだろうか?

ホームページ担当委員:城 由紀子