Topic No.135慢性腰痛患者に対する漸増運動と通常の運動療法による効果の比較
The short-term effects of graded activity versus physiotherapy in patients with chronic low back pain: A randomized controlled trial
Magalhães MO, et al. Man Ther. 2015 Feb;23
要約
背景/目的:
慢性腰痛に対し認知行動療法(CBT)と運動療法の併用は腰痛と機能障害の改善に有効と報告がされている。またこのようなCBTに基づいた運動療法として漸増運動プログラムは,患者個々の活動性に合わせて,痛みではなく身体機能に着目しながら機能的ゴールの達成に向け活動量を漸増していくことが重要とされている。一方,慢性腰痛に対する漸増運動プログラムの効果は一般的治療や無治療と比べわずかに有効であるとされているものの,他の運動療法との差は明らかでなく,エビデンスの集積は不十分である。そこで本研究は,非特異的慢性腰痛患者に対する漸増運動プログラムと通常の運動療法の効果を比較した。
方法:
本研究は非特異的慢性腰痛患者を対象としたRCTであり,対象(66名)を漸増運動(GA)群と運動療法(PE)群に無作為に分類し比較した。測定項目は痛み強度,機能障害,痛みの質,健康関連QOL,自覚的効果,仕事復帰率,kineshiophobia,活動性,身体機能とした。介入プログラムは2日/週を6週間行った。
PE群はストレッチング,腹筋筋力強化およびモーターコントロールをセラピストの管理下にて実施した。
GA群は身体機能や行動変容を目的に,トレッドミルによる有酸素運動と下肢・体幹の筋力増強運動の中から対象者に運動を選択させ,予測最大酸素摂取量の50%強度から開始し2週間ごとに10%漸増させた。また脊椎ケアについてパンフレットを用いた教育をおこなった。
結果:
漸増運動プログラムと通常の運動療法は,痛みや機能障害,QOL,kineshiophobiaの改善,身体機能および活動性の向上,仕事復帰について同様の効果を示し,差を認めなかった。
コメント
今回の結果では, CBTに基づく漸増運動と通常の運動療法では明らかな効果の差を認めなかった。しかし,通常の運動療法においてもセラピストの管理下で運動は行われており,これはHayden(2005)らが推奨しているsupervised-exercise programに相当する。このことから,ペーシングの管理や患者の痛みに対する認知,不適切な行動に配慮しながら運動プログラムを行うことが重要であると推察されるが,更なる検討は必要と考える。
ホームページ担当委員:城 由紀子