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2018-11-30

Topic No.68
慢性非特異的腰痛症例に対する感覚運動再教育アプローチ

Managing Chronic Nonspecific Low Back Pain With a Sensorimotor Retraining Approach: Exploratory Multiple-Baseline Study of 3 Participants.
Wand BM, et al. :Physical Therapy. 2011 ; 91: 535-546.

要約

背景/目的:
感覚運動再教育アプローチは幻視痛症例や複合性局所疼痛症候群(CRPS)症例に対して有効であることが報告されている.近年,慢性非特異的腰痛症例においても幻視痛症例やCRPS症例と同様に,脳の機能的変化が生じることが報告されている.幻視痛症例やCRPS症例で有効性が認められている感覚運動再教育アプローチが慢性非特異的腰痛症例に対しても効果的な可能性があるので,今回,3症例について感覚運動再教育アプローチを行った治療経過を報告する.

方法:
研究デザイン:多層ベースライン・シングルケースデザイン
1週間の無治療のベースラインの後に,最低10週間の感覚運動再教育アプローチ(表)を行った.
再評価は治療終了1ヶ月後に行った.

結果:
痛みの程度や能力障害は改善し(図),フォローアップまでその効果は継続していた.

コメント

本研究で行っている感覚運動再教育アプローチのポイントとしては,慢性非特異的腰痛症例に対して,感覚再教育課題と運動再教育課題をステージごとに段階的に漸増させていった点である.rnMoseley(Pain, 2004)はCRPS症例に対して段階的な運動イメージプログラムが効果的であることを報告しており,慢性非特異性腰痛症例においても段階的なプログラムが有用であったと考えられる.本研究のような慢性非特異的腰痛症例に対して末梢組織器官の治療を行うのではなく,大脳皮質の再組織化を目的としたアプローチは他になく,今後,更なる研究が期待されるアプローチ法である.

ホームページ担当委員:西上 智彦