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2018-11-29

Topic No.41
慢性頚部痛の危険因子:中年労働者を対象とした前向き研究

Risk factors of chronic neck pain: A prospective study among middle-age employees.
Kaaria S, et al. Eur J Pain. 2012 Jul;16(6):911-20.

 

要約

社会的因子,労働状況,生活習慣と慢性頚部痛の関係を調べた。

方法:
2000~2002年の間に,都市部の労働者13,344名(40,45,50,55,60歳)に対し,職業の種類,労働状況,BMI,喫煙,運動習慣,精神的幸福感,睡眠問題,頚部痛や腰痛の有無をメールにて調査した(回答率67%,8,960名)。
追跡調査を2007年に行い(回答率83%,7,332名),初期調査の時点で慢性頚部痛のなかった5,277名を対象とし, 頚部痛の有無と頚部痛持続期間から,頚部痛なし,急性頚部痛(3か月以内),慢性頚部痛(3か月以上)に分類した。

結果:
○女性で15%,男性で9%が慢性頚部痛を有していた。慢性頚部痛の危険率は女性では45歳と50歳で高く(40歳と比較したオッズ比1.39,95%CI 1.08-1.81),男性は60歳で高かった(40歳と比較したオッズ比 1.27,95%CI 0.62-2.57)。
○女性における慢性頚部痛の最も強い予測因子は,急性頚部痛の既往と慢性腰痛であり,その他の因子として強い関係性を示したのが肉体労働,ついで仕事に関する精神的疲労,職場でのいじめ,精神疾患,睡眠障害,肥満であった。
○男性における予測因子は,慢性腰痛と急性頚部痛,手作業労働,仕事に関する精神的疲労,睡眠障害であった。

考察:
今回の結果から,女性では職場でのいじめ,睡眠障害,肥満,男性では仕事における精神的疲労感が労働者における慢性頚部痛の危険因子であることが明らかとなった。また,男女ともに急性頚部痛のみでなく慢性腰痛の既往も危険因子となっていたことから,慢性頚部痛発症の危険を評価する際には,部位に関わらず疼痛経験の有無を確認することが重要であると考えられた。

コメント

慢性頚部痛の発症は,身体的,心理的,社会的因子が関与しており,さらに性別により危険因子が異なることや,過去の疼痛経験が影響している可能性が示されている。特に,男女とも慢性腰痛が危険因子であったことは興味深い。しかし,腰痛であることに意味があるのか,他の部位の疼痛経験でも危険因子となるのかは,調査されていないため判断できない。

ホームページ担当委員:城 由紀子