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2018-12-06

Topic No.109
投与部位別にみた五十肩に対するステロイド局所注射の有効性

Efficacies of corticosteroid injection at different sites of the shoulder for the treatment of adhesive capsulitis.
Shin SJ et al. J Shoulder Elbow Surg 22, 521-527, 2013

要約

背景/目的:
五十肩の病態には関節滑膜炎が重要な役割を果たしていると考えられており、保存療法の一つとして抗炎症作用を狙ったステロイド局所投与の有効性が報告されている。局所投与法としては一般的に肩甲上腕関節内注射が好まれるが、手技的に簡便な肩峰下滑液包注射で同様の効果が得られるかどうかは明らかでない。本研究の目的は、五十肩に対するステロイド局所注射の痛みおよび関節機能に関する有効性を投与部位別に比較検討することである。

方法:
痛みを伴う自他動可動域制限があり、画像検査で特記所見を認めない191人の片側性五十肩患者を対象とした。症例を以下の4グループに無作為に割り付けた。
○ グループ1:肩峰下滑液包にステロイド注射
○ グループ2:肩甲上腕関節にステロイド注射
○ グループ3:肩峰下滑液包と肩甲上腕関節の両方にステロイド注射
○ グループ4:NSAIDs内服(コントロール:ステロイド注射なし)
ステロイドはトリアムシノロン(40mg/1mL)に2%リドカイン4mLを混ぜ、超音波ガイド下に1回局所注射した。グループ3では半量ずつに分けて2か所に投与した。グループ4ではアセクロフェナク(100mg)を1日2回、6週間経口投与した。全患者に同じプロトコールでリハビリを行った。 American Shoulder and Elbow Surgeons (ASES) shoulder score(肩関節機能評価)、痛みの強さと患者満足度のvisual analogue scale(VAS)、自動関節可動域を治療前、治療後2、4、8、16、24週で評価した。.

結果:
○ 背景(人数、年齢、性別、罹病期間、罹患側)と治療前の各評価項目はグループ間で差が無かった。
○ 全ての評価項目において、グループ1、2、3は差が無かった。
○ ASES shoulder score、痛みの強さと患者満足度のVAS、前方挙上可動域は治療後2、4、8、16週においてグループ4がステロイドを投与した他のグループに劣っていたが、24週では差が無くなった。内外旋可動域は全フォロー期間で4群に差が無かった。

考察:
ステロイド局所投与によって早期の機能回復と疼痛軽減、満足度向上を認めたが、投与部位の違いによる有効性の差は無かった。肩甲上腕関節の滑膜炎と続発する線維化が主たる病態であるのに肩峰下滑液包注射が同程度に有効である理由としては、腱板粗部や烏口上腕靭帯を介した肩峰下滑液包への病変波及があるからかもしれない。

コメント

整形外科日常診療において、肩甲上腕関節に注射をして効果が乏しい場合に肩峰下滑液包に注射してみることがあるが、どちらにうっても両方にうっても効果は同じという結果である。また全項目が6か月後にはコントロール群と同じになり、患者の愁訴になりやすい内外旋制限の改善においては全期間で差がないのも注目すべき点である。ステロイドの局所投与回数を増やすことで効果が増強、持続する可能性はあるが、本結果は五十肩の病態が肩甲上腕関節の滑膜炎だけでは説明できないことを強調しているように思われる。

ホームページ担当委員:泉 仁