toggle
肩の痛み、膝の痛み、腰痛、神経痛など、慢性の痛みに関する総合情報サイト
2018-12-07

Topic No.114
拡張現実(augmented reality: AR)システムを用いた幻肢痛の治療法

Treatment of phantom limb pain (PLP) based on augmented reality and gaming controlled by myoelectric pattern recognition.
Ortiz-Catalan M. et al. Front Neurosci. 2014 Feb 25;8:24.

要約

はじめに:
上肢切断患者において,筋電義手を操作できるようになると幻肢痛が改善することが報告されている.これは切断端の筋収縮によって義手を随意的にコントロールできるようになるということである.これらのことから,切断端の筋収縮と幻肢を随意的にコントロールできるようになることが幻肢痛の治療には重要であると考えられている.ミラーセラピーのような視覚誘導による幻肢の随意的なコントロールだけでは不十分であると考えられる.今回,拡張現実システム(augmented reality: AR)システムを用いて,切断端の筋収縮を随意的にコントロールするエクササイズを行い,幻肢痛が改善した症例を紹介する.

症例:
症例は72歳男性で,交通事故が原因で前腕切断を行った症例である.彼の幻肢は拳を強く握ったままの状態であった.ミラーセラピー,鍼治療,催眠療法などを受けてきたが効果が認められなかった.灼熱痛が常にあることに加えて,毎時間数分だけ極度の幻肢痛が生じる.
仮想的な前腕の随意的なコントロール,レーシングゲーム,目標位置までの到達課題を,すべて切断端の筋収縮がトリガーとなって行われるようなARシステムを構築した().週に1回のトレーニングを18週間実施した.

結果:
1回目のセッションでは幻肢痛の増悪が認められたが,2回目のセッションからは徐々に幻肢痛が軽減してきた.4週目以降は軽度の幻肢痛となった.10週目では痛みを感じない時間も出現してきた.また切断端の筋収縮を用いたARシステムによるリハビリ後の15分から60分間は全く痛みを感じなくなった.

コメント

幻肢の随意的なコントロールと,切断端の筋収縮を組み合わせて評価及びアプローチを実施することの重要性を示唆する内容である.ミラーセラピーで改善が認められないような症例についてはこのような視点による観察も必要となってくると考える.それに加えて,筋電義手を随意的にコントロールすると幻肢痛が改善するという現象の意味を再び考えさせられた.

ホームページ担当委員:大住 倫弘