Topic No.35整形外科下肢手術後のリハビリテーションと痛み
Pain in postsurgical orthopedic rehabilitation: a multicenter study
Padua L, et al. Pain Med 2012; 13: 769-76.
要約
はじめに:
運動器の手術件数は増加の一途をたどり、その術後にはリハビリテーションの実施が推奨されている。運動器疾患の痛みについて多数の報告があるのに比して、術後リハビリとそれに関連した痛みについての調査は非常に少ない。
方法:
○下肢(股関節、膝関節、大腿骨、脛骨、腓骨)の手術後1週間の時点で理学療法士が痛みの強さ(0-10までの11段階NRS)と痛みがリハビリに与える影響を評価した。
○併存疾患の有無、痛みの性質の質問表2種類(ID pain=神経障害性疼痛のスクリーニング質問表、McGill疼痛質問表=痛みの性質を網羅的に調査)、QOLの尺度(SF-36)を評価した。
○痛みの強さが他の尺度に与える影響を調査した。
結果:
○運動器術後患者の82%が中等度以上の痛みを持っており、46%が神経障害性疼痛(NeP)が示唆され、疼痛が強いほどNePの傾向が強かった。膝の術後痛は特に強い。38.6%では痛みがリハビリの進捗の阻害因子として存在し、18.5%では痛みのためにリハビリを中止せざるを得なかった。
○痛みによってQOLが障害された。
コメント
○運動器術後痛の管理はまだ不十分であり、膝術後痛は特にNePが示唆される。これは、侵害受容の継続によるsensitizationか神経障害が基盤となっているのかは今後の課題。ただし、術前の痛みの性質調査が行われておらず術後痛か否かは判断できない。
○疼痛がリハビリの阻害因子となっているため、運動器疾患の治療を成功させるためには手術だけでなく術後鎮痛にも積極的に取り組まなければいけない。
ホームページ担当委員:住谷 昌彦