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2018-11-30

Topic No.51
椎間板性腰痛の自然経過についての4年間にわたる前向き臨床研究

Prospective clinical study on natural history of discogenic low back pain at 4 years of follow-up.
Peng B, et al. Pain Physician 2012 Nov-Dec;15(6):525-32.

 

要約

4年間の前向き研究による椎間板性腰痛の自然経過に関する報告。

方法:
2006年6月から2007年10月の間に慢性腰痛と診断された279名の患者のうち,MRIにてPfirmann分類3から4の椎間板変性を認め,椎間板造影にて椎間板性疼痛と診断された156名(56%)を対象とした。対象疾患決定にあたり腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症,腫瘍など椎間板以外にも疼痛源となりうる病態は除外している。
腰痛をNRS,腰椎機能をOswestry Disability Index(ODI)にて評価した。

結果/考察:
156名の椎間板性腰痛患者のうち,4年間のフォローアップ率は84%(131名)であった。患者の単純X線画像ではほとんどで椎間板高の減少を認め,その高位はL4/5もしくはL5/S,およびその両方が占めていた。
フォローアップ終了時,17名(13.0%)の患者は腰痛および腰椎機能の緩和と改善を認めた。16名(12.2%)については増悪し,88名(67.2%)についてはほぼ症状は不変であった。NRSおよびODIスコアの平均値は経年的に漸減し統計学的に有意であった(各 P<0.05)が,その改善度はいずれも比較的低値であった(7.6%,5.2%)

結論:
椎間板性腰痛の自然経過は慢性的かつ持続的であり,疼痛と機能障害は長期にわたって続きやすい。MRI,椎間板造影などにより障害高位を定め,適切に治療にあたることが重要である。

コメント

腰痛と腰椎椎間板の変性に着目した場合,慢性腰痛の25-40%が椎間板性腰痛であるとする報告もある。この椎間板性腰痛は特に慢性期において感覚神経の椎間板内への進入がひとつの要因とされるが,所謂「下肢痛のない腰痛」に分類される椎間板性腰痛は臨床における治療の適応については一定の見解を得ていない。椎間板造影・ブロックや前方/後方固定術による腰痛の改善・消失なども報告されている。今後,臨床・基礎双方からの更なる研究が待たれるところである。

ホームページ担当委員:折田 純久