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2018-12-04

Topic No.82
片麻痺後の肩痛は侵害受容性か?神経障害性か?

Hemiplegic shoulder pain: Evidence of a neuropathic origin.
Zeilig G, et al. PAIN 2013; 154: 263-271.

 

要約

背景/目的:
片麻痺後の肩痛(Hemiplegic shoulder pain; 以下HSP)は脳卒中後に頻繁に出現する。これまでHSPに関する研究では、筋骨格系障害(肩関節亜脱臼、腱板断裂など)の関与に焦点を当てた報告が多く、神経障害性疼痛が混在する可能性を検索した研究はほとんどなかった。本研究の目的は、①HSPにおける神経障害性疼痛の有無を確認すること、さらに、②もし神経障害性疼痛の存在が確認できた場合、それは肩に特異的な現象か否かを調査することである。

方法:
● 脳卒中後にHSP併発した患者(HSP群)16名、併発しなかった(non-HSP群)14名、健常者(healthy群)15名(過去に肩痛の既往のない患者を選択)。
● 測定項目:
①患側肩および下肢における温感覚、冷感覚、熱痛覚、触覚、筆跡感覚
②患肢全体におけるアロディニア、痛覚増強の有無
③脳MRI撮像

結果:
● HSP群およびnon-HSP群ではhealthy群と比較して、患側の肩および下肢ともに、全ての感覚刺激に対して高い閾値を示した。
● HSP群ではnon-HSP群と比較して、肩および下肢ともに、熱痛覚閾値が高く(肩:P<0.001、下肢:P<0.01)、その程度はHSPの程度と正の相関を示した。また、HSP群では、患肢全体においてアロディニアおよび痛覚過敏を訴える頻度が高かった(P<0.001)。
● 脳MRI撮像において、HSP群ではnon-HSP群と比較して頭頂葉傷害が高頻度に認められた(P<0.05)。

考察:
Ⅰ)HSP群では上下肢ともに感覚伝達系の障害が強く認められた
Ⅱ)HSP群では患肢全体においてアロディニアおよび痛覚過敏を有する頻度が高かった
Ⅲ)HSP群では頭頂葉傷害が高頻度に認められた
以上の3点より、HSPは神経障害性疼痛の要素が強く、さらに中枢由来の可能性が高いと考えられた。

コメント

片麻痺後の肩痛は、十分なリハビリテーション実施を困難し、入院の長期化や機能障害改善の阻害に繋がる。これまでに、片麻痺後の肩痛については末梢の筋骨格系の関与に着目して研究が進められ、様々な末梢に対する治療法(ボツリヌス毒素投与、肩関節へのコルチコステロイド投与、筋への電気刺激など)が試みられたが、いずれも有効性は乏しいとされている。 本研究は片麻痺後の肩痛について中枢由来の神経障害性疼痛の関与を示した報告であり、今後の治療戦略を考える上での重要な参考になると考えられる。

ホームページ担当委員:森本 温子