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2018-12-07

Topic No.116
理学療法士の知識や考え方は復職や活動性の維持、向上を促す腰痛マネジメント方略の決定に影響を与える

Physiotherapists’ knowledge, attitudes, and intolerance of uncertainty influence decision making in low back pain.
Clin J Pain. 2012 ;28(6):467-74.

要約

背景/目的:
近年、医療従事者の態度や信念、考え方が腰痛マネジメントやそのアウトカムに影響を及ぼすことが報告されるようになった。本研究では、ケベック州(カナダ)の理学療法士の腰痛やそのマネジメントに対する知識や考え方、痛みや自信のない場面に遭遇したときの態度を調べ、腰痛マネジメントに与える影響を検討した。

対象/方法:
対象はケベック州の理学療法士108名とした。対象者には、腰痛診療ガイドラインの内容に関する知識を聴取した。また、質問紙による調査にて慢性腰痛のマネジメントにおける「生物医学的」または「行動学的」なアプローチの指向の強さをPain Attitudes and Beliefs Scale for Physiotherapists(PABS-PT)で、痛みへの恐怖思考をFear of Pain Questionnaire(FPQ)で、自信のない場面に遭遇した際の否定的な態度をIntolerance of Uncertainly Scale(IUS)で 調べた。加えて、腰痛患者を2症例(文章にて)提示し、それぞれの症例に対する評価と治療方針(復職、活動性の維持、向上を促すか)について聴取した。

結果:
腰痛診療ガイドラインの内容を熟知しているのは13名(12%)のみであった。また、多くの理学療法士は治療方針において腰痛診療ガイドラインで推奨されている復職および活動性の維持、向上を促すことを積極的にすすめなかった。「生物医学的」なアプローチ指向が強いと、腰痛患者の評価で脊柱の病態をより厳しく見積もる傾向を示し、IUSが高かった。
一方、「行動学的」アプローチ指向が強いと、疼痛マネジメントで復職および活動性の維持、向上を促す傾向があった。また、慢性痛に関する卒後教育を受けている者は、そうでない者に比べて「生物医学的」アプローチへの指向性が低く、「行動学的」アプローチへの指向性が高かった。自信のない場面に遭遇した際の否定的な態度は、慢性腰痛マネジメントにおけるアプローチの指向性を介して、治療方針の決定に影響を与えていた。

コメント

近年、腰痛をはじめとした様々な疾患や症状に対する診療ガイドラインが各国で作成されている。日本においても、Minds が診療ガイドラインを提供しているほか、日本理学療法士協会も会員向けに理学療法診療ガイドラインを作成、公開している。本研究はケベック州の理学療法士を対象とした研究であるが、日本での理学療法士やその他の医療職者においても同様の傾向がみられるかもしれない。疼痛マネジメントに関する研究を診療場面に還元するような本ホームページのような取り組みや診療ガイドラインの普及は非常に重要と考える。

ホームページ担当委員:下 和弘