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2018-12-06

Topic No.97
痛みと認知機能の関係性は年齢によって変わる?

On the moderating role of age in the relationship between painand cognition.
Oosterman JM et al. Eur J Pain. 2013 May;17(5):735-41

 

要約

背景/目的:
若年者や中年者において認知機能が低い者ほど痛みの訴えが強いということは、これまでにもいくらか報告されてきた。しかしながら、高齢者では反対に、痛みと認知機能の正の相関性についての報告も散見される。そこで、本研究では年齢によってこれらの関係性が変化している可能性について調査した。

方法:
■対象者 若年者(19-40歳) 22名、高齢者(50-80歳)24名
■測定項目
1.疼痛(The McGill Pain QuestionnaireからVASとpain relating index(PRI)を算出)
2.認知機能:
○ 精神運動機能(the Word and Colour cards of the Stroop test, the TMT-A score)
○ 実行機能(TMT-B-ratio score, the Stroop interference score, the Letter Fluency test)
○ エピソード記憶(Immediate, Delayed)(the Story Recall subtest of the Rivermead Behavioural Memory test)

結果:
■解析1:年齢、疼痛(VAS, PRI)および各認知機能について階層回帰解析(hierarchical regression analyses)
○ VASとageに対して、エピソード記憶(Immediate)および実行機能(TMT-B ratio)に強い相関、エピソード記憶(Delayed)に弱い相関が認められた。
○ PRIとageに対して、エピソード記憶(Immediate, Delayed)および精神運動機能(Stoop colour)に強い相関が認められた。
■解析2:解析1にて相関のあった認知機能項目について、若年者群と高齢者群に分けて単回帰解析
○ 若年者群において、VASとエピソード記憶(Immediate, Delayed)および実行機能(TMT-B ratio)に強い負の相関が認められた(PRIを用いた解析でも同様の結果が得られた。)
○ 高齢者群において、VASと実行機能(TMT-B ratio)に強い正の相関が認められた。また、PRIと精神運動機能(Stoop colour)に弱い負の相関が認められた。若年者群で認められた痛みとエピソード記憶との強い負の相関は高齢者群では認められなかった。

考察:
若年者群ではエピソード記憶や実行機能が低い者ほど痛みの訴えが大きいこと、高齢者群では実行機能が高い者ほど痛みの訴えが大きいことが示され、年齢によって痛みと認知機能の関係性は変化することが示唆された。

コメント

これまで痛みと認知機能の関係性についてはいくつか報告があったが、本研究は年齢という視点を加えて調査した初めての研究である。年齢によるこれらの逆転現象はどのような機序が作用しているのか、非常に興味深い点である。

ホームページ担当委員:宮崎 温子