Topic No.58痛みの感じ方に性差(男女差)はあるか?
A systematic literature review of 10 years of research on sex/gender and experimental pain perception – part 1: are there really differences between women and men?
A systematic literature review of 10 years of research on sex/gender and pain perception – part 2: do biopsychosocial factors alter pain sensitivity differently in women and men?
Racine M, et al. Pain. 2012 Mar;153(3):602-18(part1), 619-35(part2).
要約
実験的な痛み(Part1)と、心理社会的要因(Part2)をもとに、性差と痛みの感じ方の調査のレビューを行った。
方法:
性差に関する痛みの感じ方を調査した1998~2008年までの172の報告から、前半(Part1)は実験的な痛み刺激に関する122の研究報告を、後半(Part2)は心理社会的要因と痛みに関する129の研究報告を調べ、性差による痛みの感じ方をレビューした。
結果:
○ 冷刺激、熱刺激、虚血性の痛み、筋肉への痛み刺激、化学的な痛み刺激に対して、明らかな男女差はみられない。圧痛閾値は、女性のほうが低い傾向がみられる。
○ アロデニアや痛覚過敏は、女性のほうが出やすい傾向がある。
○ 抑うつや精神的要素が痛みに与える影響に男女差はみられない。
○ 社会的背景として、女性では、過去の生活史が痛みに影響を及ぼすことがある。
コメント
痛みと性差に関して網羅的に調査した報告であり、その内容は興味深いものである。
傾向としては、実験的な刺激に対して明らかな男女差は見いだせないが、心理社会要因に関しては女性のほうが痛みに敏感である可能性を示唆している。
女性の慢性疼痛患者を診る際には、より心理社会背景に注意すべきかもしれない。
ホームページ担当委員:池本 竜則