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2018-12-10

Topic No.139
痛みの破局的思考は橈骨骨折術後の手指関節可動域障害と関連する

Catastrophic Thinking is Associated with Finger Stiffness After Distal Radius Fracture Surgery.
Teunis T. et al. J Orthop Trauma. 2015 Apr 8.

 

要約

背景/目的:
橈骨骨折後に生じる手指可動域障害は治療における大きな課題であるが、本問題は、外傷エネルギーの大きさや骨折の複雑さだけでは説明困難あると言われている。そこで本研究では、骨折の複雑さだけでなく患者の心理社会背景に関する因子を抽出し、術後の手指可動域障害との関係を探った。

対象/方法:
橈骨遠位端骨折に対して、掌側ロッキングプレートにて整復固定を行った患者のうち、創部抜糸時の116名と、術後6週時の96名を対象とした。
術後の2地点で年齢、性別、婚暦、学歴、術者、AO骨折タイプ、手術時の横手根靭帯解放の有無、痛みの破局的思考(PCS)、心気症器質(WI)、うつ評価尺度(PHQ-9)、痛みの強さNRS、DASHスコア、術前後の解剖学的整復度を評価した。
また手指のこわばりの指標として、各指(2~5指)の先端から最遠位手掌線までの距離の合計と関節可動域の合計角度(通常1080度)および、母指の関節可動域合計角度(通常240度)を計測した。

以下の6つの計測値に関与する因子を多変量解析法にて検出した。
(1)抜糸の時の手掌線の距離
(2)術後6週時の手掌線の距離
(3)抜糸の時の関節可動域の合計
(4)術後6週時の関節可動域の合計
(5)抜糸の時の母指関節可動域の合計
(6)術後6週時の母指関節可動域の合計

結果:
各指(2~5指)の手掌線の距離(合計)と関節可動域(合計)には、抜糸時、術後6週時ともに負の相関関係が認められ(R=-0.7、P<0.001)、手掌線の距離の合計が長いほど関節可動域が少なくなることが確認された。

各項目に関与する因子は以下の通りである。括弧内はそれぞれ、(係数β値,P値)を示す
○抜糸の時の手掌線の距離
男性(-2.7,0.044)、既婚者配偶者有(4.7,0.05)、手術時の横手根靭帯解放(4.0,0.009)、AO骨折タイプC(2.6,0.047)、PCS(0.32,0.014)

○術後6週時の手掌線の距離
PCS(0.40,<0.001)

○抜糸の時の関節可動域の合計
PCS(-4.7,0.047)

○術後6週時の関節可動域の合計
年齢(-3.2,<0.001)、教育歴(10,0.008)、PCS(-5.9,0.012)

○抜糸の時の母指関節可動域の合計
男性(27,0.007)、術者C(-39,0.031)、AO骨折タイプC(-22,0.026)、PCS(-1.6,0.033)

○術後6週時の母指関節可動域の合計
年齢(-0.78,0.021)、既婚者配偶者有(-26,0.045)、術者B(28,0.014)

コメント

これまでの外傷学では、骨折の複雑さや解剖・力学的見地から後の障害度を評価するものが多かったが、近年、患者の心理社会背景がアウトカムに関連することが示され始めている。本報告では、外傷術後の客観的な腫れの強さを手掌線の距離として調査し、痛みの破局的思考そのものが術後の腫れや可動域制限に関連することを示した興味深い報告と言える。
またあまり目立たない点ではあるが、全体の手術のうち半数以上(57%)担当したBは6週時の母指可動域獲得の要因になっているのに対して、手術担当(11%)の最も少ないCは抜糸時の可動域制限の要因になっており、やはり技術そのものも大切な要因の一つである。

ホームページ担当委員:池本 竜則