Topic No.59筋筋膜性の痛みに対する注射方法の比較
Comparison of injection methods in myofascial pain syndrome: a randomized controlled trial.
Ay S, et al. Clin Rheumatol. 2010 Jan;29(1):19-23.
要約
筋筋膜性疼痛に対して、後頸部トリガーポイントへの「リドカイン注入+運動プログラム」と、「針刺しのみ+運動プログラム」の効果について比較検討した(トルコ)。
方法:
対象者のスクリーニングは19-58歳で、1か月以上、後頸部痛を有し、僧帽筋上に一か所以上のトリガーポイントを有するものとした。これらの者のうち、TravellとSimonsの筋筋膜性疼痛の診断基準に合致するものを選出。さらに全身疾患、頸椎椎間板ヘルニア、線維筋痛症、後頸部領域の手術歴を有する者などについては、対象から除外し、最終的に80(男性28、女性52)を対象者とした。
対象者のうち、半分の40名には1%リドカイン2㏄(Gruop1)を、残りの40名には同じ太さの針で何も注入しない手技(Gruop2)を行い、それぞれ同様にトリガーポイント上(多くは2か所)に実施した。また注射手技後には、頸部の運動プログラムを12週間、毎日実施させた。これらの両群について、治療前、4週、12週時の、痛み(VAS)、頸椎可動域、Beckうつスコアについてフォローした。
結果:
○ 両群とも、治療前に比べ、4週、12週時の、痛み、頸椎可動域、うつスコアいずれも有意な改善がみられた。
○ これらの改善度合いについては、両群間で有意な差は見られなかった。
コメント
筋筋膜性疼痛に対するトリガーポイントへの注射手技は広く行われており、またその効果は様々な研究から証明されている。ただ、注射に用いる薬剤については種々の局所麻酔薬の他に、ボツリヌス毒素などが効果的であるという報告があるが、どの薬剤が最も効果的であるかの結論は出ていないようであり、むしろ針刺し手技自体に意味があるとも考えられている。
本研究では針刺し手技の回数に関して、最初の一回だけなのか複数回行ったのか明記がないのが問題点であるが、他の研究報告でもあるように、頸部の運動を持続的に行わせたことに意義があるのかもしれない。
ホームページ担当委員:池本 竜則